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「イノベーションのジレンマ」の大誤解

成功する社内事業開発の「偶発的出現率」を高める8つの“道すじ” ──『幸田正司物語・最終章』

第10回:「イノベーションのジレンマ」の大誤解【番外編2】イントラプレナーアクセラレーターという選択肢Vol.4

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最初のハードルは「社内指定の事業計画フォーム提出」という“社内お絵かき”~「幸田正司物語⑦」

幸田の「新規事業開発専任」の人事発令は問題なく進んだものの、いきなり最初のハードルにぶつかる。事業開発を推進するにあたって改めて社内指定の事業計画フォーム提出を経営管理部から求められたのである。幸田はこれまで2年間、スタートアップのコミュニティでの活動を通じて、優秀なスタートアップほど見た目がよい形式的な事業計画にはこだわっていないことを知っている。形式的に作るのは銀行から借り入れするか、VCから出資を受ける時など必要に駆られたときである。それは、どれだけ緻密な計画を作ったとしても、市場と対話をするプロセスで計画がどんどん変わっていくことをスタートアップ達は経験的に知っているからである。経営管理部のフォームは社内の過去のしがらみを集大成させたようなものであり、「3年目で黒字化、5年目での投資回収」を前提としてフォームが固定化されており、IRR(内部収益率)のハードルレートを越える「社内お絵かき」をしなければならなかった。

これまでの意思決定権者たちは高度経済成長期を謳歌した世代であり、未来がある程度予測の範囲内で動いている時代であったため、空いているマーケットによいプロダクトを出しさえすれば成功できた体験を持っている。したがって、リニアな計画が成功法則なのである。こういう成功体験を棄却することは極めて難しい。これだけ市場環境が流動的で、未来が不透明なVUCAの時代にあっても、これまでの習慣や価値基準を変えることは難しい。さらに、このフォームには、社内の資源を有効活用できる可能性とともに、社内の既存事業とは競合しないことを説明する欄まであった。

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鈴木 規文(スズキ ノリフミ)

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