荻野英希さんと考えるイノベーションの「上位目的」、戦略を実行に移す「資源の活用」とは

第1回:荻野英希さんインタビューVol.1

 「マーケティング部門のみがマーケティングを行うのか」、同様に「事業開発部門のみが事業開発を担うのか」。本連載では「市場創造」が両者に共通する活動ではないかという仮説をもとに、それぞれの識者との対談から「新たな示唆」を得ることを目的した企画である。各部門をとりまく組織間の壁や認識の違いを解消し、デジタルシフト時代に日本企業が飛躍する可能性を模索する。ホストはFICC代表取締役の荻野英希氏。
 本稿では、荻野氏とともに、イノベーションとマーケティングの共通項である「上位目的」とは何か、企業内で戦略を実行に移す「資源」に関して、お話を伺った。

[公開日]

[語り手] 荻野 英希 [取材・構成] マチコマキ [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] マーケティング 事業開発 デジタルシフト PASフォーミュラ 有限資源 無限資源 市場創造

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マーケティングにおける「商品が持つ特性を際立たせること」と「需要を喚起すること」、そして「喚起した需要を刈り取ること」の違い

──「マーケティング×イノベーション=市場創造」という考え方が本連載のスタンスです。ただし私の中でもまだまだ漠然としております。
荻野さんは、FICCの代表としてグローバルブランドのデジタルマーケティングを支援されています。荻野さんのフィールドである「マーケティングとは何か」を、少し原則的な話からうかがえますか。特に、「ブランディング」と「マーケティング」と「プロモーション」という活動に関して。

荻野
 なるほど……。読者によっては“釈迦に説法”なお話かもですが、その辺から始めてていきますね。

 「ブランディング」とは商品やサービスが持つ特性を際立たせ強化する活動であり、「マーケティング」とはその特性に対する需要を喚起する活動です。この両者を「ブランドマーケティング」と呼ぶ場合もあります。さらに、喚起された需要を刈り取っていく活動が「プロモーション(販促)」になります。

 これらを総称して「マーケティング」とするのが、違和感のない一般的な認識でしょう。しかし、私はマーケティングの目的は、新しい需要喚起による「市場創造」だと思っています。

 「需要喚起」の例で分かりやすいのは、テレビショッピングでのセールストーク。ダイレクトマーケティングの権威であるアメリカのダン・S・ケネディが考えた「PASフォーミュラ」という手法が有名です。「問題(Problem)」を定義し、「あおり(Agitate)」、「解決方法(Solution)」を提示するというプロセスです。

 PASフォーミュラと親和性が高いのは、テレビなどのマスメディア。マスメディアによって、ステレオタイプにセグメントされた集団に対して問題定義を行えば、大きな需要を創りだすことが、以前はできていました。

 しかしデジタルシフトが進んだ現代において、生活者のライフスタイルは細分化され、マスメディアだけでは需要喚起は難しくなっています。デジタルマーケティングを駆使して、セグメントごとに細かく需要形成をしなくてはなりません。

荻野 英希(おぎの ひでき)

世界最大手の広告代理店・WPPグループ最大のデジタルエージェンシー、VMLの日本代表およびFICC inc.代表取締役社長。多くのグローバルブランドへ、デジタルマーケティングのコンサルティングサービスを提供している。

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