マーケティングにおける「商品が持つ特性を際立たせること」と「需要を喚起すること」、そして「喚起した需要を刈り取ること」の違い
──「マーケティング×イノベーション=市場創造」という考え方が本連載のスタンスです。ただし私の中でもまだまだ漠然としております。
荻野さんは、FICCの代表としてグローバルブランドのデジタルマーケティングを支援されています。荻野さんのフィールドである「マーケティングとは何か」を、少し原則的な話からうかがえますか。特に、「ブランディング」と「マーケティング」と「プロモーション」という活動に関して。
荻野:
なるほど……。読者によっては“釈迦に説法”なお話かもですが、その辺から始めてていきますね。
「ブランディング」とは商品やサービスが持つ特性を際立たせ強化する活動であり、「マーケティング」とはその特性に対する需要を喚起する活動です。この両者を「ブランドマーケティング」と呼ぶ場合もあります。さらに、喚起された需要を刈り取っていく活動が「プロモーション(販促)」になります。
これらを総称して「マーケティング」とするのが、違和感のない一般的な認識でしょう。しかし、私はマーケティングの目的は、新しい需要喚起による「市場創造」だと思っています。
「需要喚起」の例で分かりやすいのは、テレビショッピングでのセールストーク。ダイレクトマーケティングの権威であるアメリカのダン・S・ケネディが考えた「PASフォーミュラ」という手法が有名です。「問題(Problem)」を定義し、「あおり(Agitate)」、「解決方法(Solution)」を提示するというプロセスです。
PASフォーミュラと親和性が高いのは、テレビなどのマスメディア。マスメディアによって、ステレオタイプにセグメントされた集団に対して問題定義を行えば、大きな需要を創りだすことが、以前はできていました。
しかしデジタルシフトが進んだ現代において、生活者のライフスタイルは細分化され、マスメディアだけでは需要喚起は難しくなっています。デジタルマーケティングを駆使して、セグメントごとに細かく需要形成をしなくてはなりません。
荻野 英希(おぎの ひでき)
世界最大手の広告代理店・WPPグループ最大のデジタルエージェンシー、VMLの日本代表およびFICC inc.代表取締役社長。多くのグローバルブランドへ、デジタルマーケティングのコンサルティングサービスを提供している。