「顧客のジョブ」からはじまる、特定の状況で想起される“目的ブランドへの進化”とは?

BizZineセミナーVol.1レポート前編:INDEE Japan 取締役トレーニングディレクター 山田 竜也氏

 新しい商品・サービスの開発には、長らく「顧客のニーズに応えること」が大切と考えられてきた。しかし、十分にモノが供給され、顕在的なニーズはほぼ満たされている現代では、より潜在的ニーズを捉え、本質的な欲求を捉えることが求められている。この本質的な欲求と解決したい用事である「ジョブ」をどうやって発見するのか。そのために理解すべき「ジョブ理論」と、それを活用したリサーチやアプローチの方法について、INDEE Japan取締役トレーニングディレクターの山田 竜也氏が解説した。

[公開日]

[講演者] 山田 竜也 [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 ジョブ理論 顧客のジョブ ブランドマネジメント

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新しい事業機会を探る起点となるジョブとは、「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩」

 近年、商品・サービス開発におけるアプローチ法として注目を集める「ジョブ理論」とは何か。山田氏は最新の定義として2017年8月に発行されたクリステンセンの著書『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』から引用し、ジョブについて「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩」と紹介する。今の生活をよりよくしたいという人の欲求そのものというわけだ。

ジョブ理論ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

 ジョブ理論が登場する前から、例えば、エジソンは「世界がいま本当に必要としているものを創るのだ」と語った。ダイソンでも「なぜそれが必要か」「どんな技術が必要か」「自分達が持つ技術やノウハウで実現可能か」を経て、「ユーザーが体験できるレベルで結果が出せるか」と問い続け、商品化に至る。優れた製品を世に出してきた両者とも「何が必要か」というゼロからの問いに始まるというわけだ。

 その「何が必要か」の探索において、「ジョブ」の発見が役に立つという。山田氏は「洗濯機」を例に取り、具体的な「ジョブ」について解説する。通常、洗濯機が解決する「ジョブ」として「汚れを落とす」「匂いを落とす」などを想像するだろう。しかし「異常な暑さが続くインドで、栄養価の高い冷たい飲み物を短時間で大量に作る必要がある」という状況ならば、洗濯機が「ラッシーを作る」というジョブもあるかもしれない。つまり、ジョブを考える際には「ある特定の状況」を設ける必要がある。

 例えば、中国という「ある特定の状況」では、野菜を洗うのに洗濯機が使われ、トラブルの頻発でメーカーが「野菜洗浄不可」と注意するまでになったという。一方で、「野菜も洗える洗濯機」を開発し、大ヒットに結びつけたメーカーもあったというから、商品開発に「ジョブ」の発見が有効であることが想像できるだろう。

 「通常は前出の洗濯機メーカーのように『野菜を洗うな』というようにジョブを限定してしまう傾向にあり、ユーザーの真のニーズに気づきにくい傾向にある。『洗濯機とはこういうものだ』という縛りから脱却し、ジョブという観点から見直すことが大切」と山田氏は解説する。

 それでは「電子レンジ」ではどうだろう。独身でコンビニ弁当を温めるだけだったのが、結婚して料理に使うようになり、子どもが生まれたら哺乳瓶の消毒にも使う、というように、「同じ人が使う電子レンジ」でも、状況の変化でジョブが変化していく。

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