ジョブとは人が製品・サービスを“雇って”解決したいこと
ジョブ理論のジョブとは、「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩」だとクリステンセン教授は定義する。やりたいこと、やらなければならないこと、片付けるべきこと、本質的にやりたいことである。ジョブといっても抽象度の高い、「長生きをしたい」ということはジョブとは言えない。「この病気から症状を取り除きたい」というくらいであればジョブとして考えられる。
ジョブで大事なのは「状況」と「進歩」だ。それを明確にするために、洗濯機を例に挙げて考えてみよう。多くの人にとって洗濯機を使うのは、洋服の汚れを落としたいとか、洋服の匂いを取りたいからだろう。その動機がジョブだ。ところが、インドに行くと夏の暑い時期に大量のラッシーを作るのに、手でかき混ぜると大変だからと洗濯機を使うことがあるらしい。その場合、その人たちにとっての洗濯機のジョブは「ラッシーを作ること」になる。
残り物を温めるというのは、電子レンジが片付ける一般的なジョブだ。あるいは、手間をかけずに調理するということも電子レンジの片付けるジョブになる。赤ちゃんに授乳中の人にとっては、哺乳瓶を消毒するということもジョブになる。
赤ちゃんがいない人にとって哺乳瓶の消毒をするということはジョブにはなり得ない。つまり、物理的、社会的、個人的な状況によって、人のジョブというものは大きく影響を受ける。ジョブは人口統計学的なものとは違い、細かく変動するものである。そのため、なかなか目にはっきり見えてこない。
ジョブはユーザーの状況によって変化する。人口統計学的属性情報だけでなく、物理的な環境(どこにいるか、いつなのか等)、社会的環境(誰といるのか、どんな立場なのか等)、個人的状況(どんな気分か、こだわり等)を掛け合わせて考える必要があるのだ。