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インダストリーX.0とは何か?

新規事業創出のための「ワイズピボット戦略」──日本の製造業がビジネス転換するために必要な考え方とは?

第3回

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 インタストリーX.0の世界観は究極的には、企業中心のプッシュ型の「ものづくり」ビジネスモデルから、人間中心のプル型のサービスビジネスモデルへの変革を言う。前者は、製造オペレーションの効率化が最も付加価値が高くなる「ムサシカーブ」を描いており、後者では、顧客接点が最も付加価値が高くなる「スマイルカーブ」へと競争源泉が変化することを第1回では触れた。また、第2回では、人間中心のプル型のサービスビジネスモデルへと変革実現する手法として近年注目されているデザインシンキングについて解説した。  ただし、デザインシンキングだけではプル型のサービスビジネスモデルへの転換は難しいのが現状だ。デザインシンキングを活用した新規ビジネスモデル創出に踏み出す前に、日本の伝統的なものづくり企業はその推進スキームを徹底的に研究しなければいけない。今回は伝統的な日本企業が、「顧客成果」起点へ事業転換するために必要な視点・施策を検討する。

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プル型のサービスビジネスモデルへの事業転換に必要な、ヒト・カネ・モノの投資方法とは?

 プル型のサービスビジネスモデルへの事業転換には、デザインシンキングのアプローチが有効であることは触れた。しかし、デザインシンキングに取り組む前に、その運用スキームも適切に準備しなければ、デザインシンキングはただのワークショップとして単発の取り組みに終わってしまう危険性がある。

 デジタルを活用した新規ビジネスの推進体制に一般的な解はなく、個々のビジネス環境や目的に沿って入念に検討する必要がある。通常、顧客視点から新サービスを企画し各役割担当者に指示を出す「イノベーション企画・プランナー」や、組織及び社内・社外を横断してサービス提供に必要な業務プロセスの変革ポイントをデザイン・調整する「業務プロセス・デザイナー」、サービスの意思決定を支えるために探索的データ解析とモデリングを繰り返し行っていく「データサイエンティスト」などが必要となる。

 ただし、多くの伝統的な日本企業に言えることは、そうしたケイパビリティを持った人材を社内リソースだけで活用、もしくは育成するのには限界があるということだ。プル型のサービスビジネスモデルへの事業転換においては、これまで「モノ」づくりに必要だったビジネスパートナー以外に、これまで付き合ったこともなかったパートナーと手を組むことになる。どの企業と組むかは企業の将来を左右する判断になるといっても過言ではない。

「年次事業計画」型の投資と「アジャイル/プロジェクト型」の投資(アクセンチュア作成)「年次事業計画」型の投資と「アジャイル/プロジェクト型」の投資(アクセンチュア作成)

 また、カネについても、従来の「年次事業計画」型の投資方法では新規ビジネスの推進が難しい。従来の「年次事業計画」型の投資方法では、一般的に事業の収益に責任を持つ担当役員が事業部ごとに存在し、年間もしくは3~5年の事業計画に沿って必要なヒト、カネ、モノのリソースを配分する。当然、事業計画達成のために配分された経営リソースであるため、そこには失敗や未達は基本的に許されず、計画未達の失敗は悪とみなされ人事評価などにも影響する。

 こうした「年次事業計画」型の投資方法は、固定的・縦割りのリソース・予算配分で1年間(もしくは収益責任者である役員の任期の分まで)走り切ることが一般的となっており、そもそも計画が立てられないような新規ビジネスの創出には向かない。そこで近年成功モデルとして認識され始めているのが、「アジャイル/プロジェクト」型の投資方法である。

 「アジャイル/プロジェクト」型の投資方法では、例えば100億円を「イノベーション企画・プランナー」に託す、いわゆる社内ベンチャーのようなスキームである。これを運用する上では、失敗を「想定内」としてヒト・カネを柔軟にやり繰りする運営をスムースに行う体制を整える必要だ。また、その失敗を判断するためのゲートウェイの管理を徹底して行ったりするなどの成功のポイントがいくつかあるが、適切な判断を下すためには、現在と将来のビジネス環境、技術動向への深い洞察が欠かせないことは明確である。

 次ページでは、ドイツテレコムの事例を紹介する。幅広くテクノロジーを把握し、顧客ニーズや市場動向を踏まえた案件ポートフォリオの策定に加え、体系的なライフサイクル管理を通して、失敗から学べる仕掛けとしてイノベーションの数や成功率を向上させた良い例である。

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この記事の著者

花岡 直毅(ハナオカ ナオキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

佐々木 智江美(ササキ チエミ)

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