経営変革のために「デザイン思考」をどのように活用すべきなのか?
2015年にAppleがCDO(Chief Design Officer:最高デザイン責任者)を置く動きを筆頭に、日本でもCDO職が置かれるなど、経営とデザインの距離が近づいている。最近では、経産省と特許庁が取りまとめた報告書「デザイン経営宣言」でも、経営とデザインの融合をうたっている。登壇した千葉工業大学の山崎和彦教授は、経営を変革するデザインの2つの役割とデザイン思考の活用シーンから語り始めた。
経営を変革するデザインの視点には、大きく2つの視点が必要だと言われています。一つは、ユーザー側からビジネスを眺める「アウトサイド・イン」の視点であり、ユーザー・エクスペリエンスと言われる領域。もう一つは、ビジネスサイドからユーザーを眺める視点で「インサイド・アウト」の視点であり、ブランド体験やビジョンやストラテジーと言われる領域です。
山崎氏は、デザイン思考には幾つかの活用シーンがあるという。
具体的には、デザイン思考が解決する領域は3つあります。一つ目は、「新しい製品やサービスを生み出せない」という商品・製品開発の課題について。二つ目は、「新しいビジネスを生み出せない」という事業開発の課題に対して。そして、今一番求められているのが「アングラで試していた活動を組織の公式な活動にしづらい」という課題です。これら3つの課題に対し有効な手法がデザインシ思考です。
しかし組織へのデザイン思考の活用には時間がかかり、どのように経営に活かしていくかは、慎重に「順番」を考える必要があると語る。
まずは「トランスフォーメーション」フェーズとして、社内でゲームチェンジの必要性を共有し、技術・社会・ビジネスモデルの視点からユーザーを観察する。次に、現在の組織のコアとなる活動ではない新製品や新事業の開発をアングラ活動と定義する。そこでデザイン思考を活用し「アングラ活動」を推進していく。そして、アングラで培ったノウハウを正規のプロセスとするために「組織へのデザイン思考の活用」を行うという「順番」が大事だと再度強調する。