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「スケール・ディーパー」とは何か

みつばち鈴木先生が語る、目の前の人を幸せにする「デザインの本質」と「スケール・ディーパー」の共通点

ゲスト:立正大学経済学部特任教授 鈴木 輝隆 氏【前編】

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鈴木 輝隆鈴木 輝隆(すずき てるたか)さん
1949年生まれ。73年北海道大学農学部卒業。神戸市役所、山梨県庁、総合研究開発機構主任研究員などを経て、現在、立正大学経済学部特任教授。観光まちづくり、地域経営、ローカルデザインなどを専門に、学生たちとフィールドワークを行う一方で、自らもクリエイターと共にさまざまな地域プロジェクトのアドバイザーや委員長を務める。著書に「田舎意匠帳(ろーかるでざいんのおと)」など。


日本全国の地域で人と人とを繋げて“受粉”を行うみつばち先生 新しい価値の生み出し方とは

栗岡大介さん(以下、敬称略):鈴木先生に初めてお会いしたのは、昨年の暮れ頃で、同僚の坂崎から「これから地域のことを考えて活動するなら、まずは先生に会うべきだ」と紹介されたのがきっかけでした。実際に先生にお会いし、これまでの実績だけでなく独自の哲学に感銘を受けて、それですぐ2週間後に、愛媛・内子町のお仕事に同行させていただきました。

鈴木輝隆さん(以下、敬称略):そうでしたね。そこからまたいろいろと出かけましたね。

栗岡:ご一緒させていただくうちに、“みつばち先生”と呼ばれている所以がわかってきた気がしました。こうやって日々地域を飛び回って人と人とを繋げて“受粉”をしていらっしゃるんだな、と。そんなわけで、まずは鈴木先生が“みつばち先生”と呼ばれるようになった経緯を少しお聞きしたいと思います。

鈴木:地域を歩きはじめたのが40年前くらいのことです。山梨県庁で働いている時で、地方行政の壁を感じていました。当時は「国が地域のことを考える」のが主流の時代で、「地域が国を考える」という発想が乏しかったんですね。江戸時代までは地域がしっかりとありましたが、明治以降の近代化というのは、工業化、都市化であり、地域の文化を壊し続けることでもあったわけです。国としては強くなったけど、その代わりに地域は死んでいってしまっていた。

栗岡:そうですね。戦後の日本はモノを効率的に作り、効率的に運ぶ製造業で発展しましたが、同時に地域の“らしさ”がどんどんと失われてしまったところがあります。

鈴木:休みを利用して日本中の地域を歩いて勉強しているうちに、素晴らしい可能性を持つ地域をたくさん見つけることができました。それらの潜在能力を活かすにはどうしたらいいんだろうと考えていた時に、才能あるデザイナーや建築家と出会った。そこから私の活動で明確に意識しているのは、地域を「デザイン」で輝かせるということですね。

栗岡:建築家の隈研吾さん、デザイナーの原研哉さん、梅原真さんなど、鈴木先生の長年のお仲間たちは今となっては世界的に活躍する錚々たるメンバーです。先生が地域と向き合う中で「デザイン」に注目された理由はどんなところにあるんでしょうか?

鈴木:新しい可能性や価値をちゃんと“形”にまでする、というところまでやらないと、地域の魅力をいくら分析していても未来が見えてこないということがわかったんです。パッケージが今ひとつだったり、情報発信力に乏しかったりすることで、魅力的な産業、産物が世の中から見逃されてしまっていました。

それで、隈さんや原さん、梅原さんたちを、全国いろんな地域に連れていきました。一緒に旅をして、楽しく地域の人と対話する。その中で、地域の持っている可能性を彼らが見直してくれて、ポスターだったりボトルだったり、建物だったり、新しい価値が形になっていった。風景、食、人などのすべての資源に可能性を見出して、デザインを通して表現していく。地域が持続的に発展していくためには、こういう具体的な形になる取り組みが大切だと思っています。

栗岡:“みつばち”と名付けたのも、原さんだそうですね。原さんは、ローカルがそれぞれに持つ独自の魅力を“花”に、デザイナーや建築家を “花粉”に例えて、鈴木先生は触媒となって受粉させる“みつばち”なんだ、と。

みつばち鈴木先生みつばち鈴木先生―ローカルデザインと人のつながり
(原研哉 編・羽鳥書店 刊)

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