最初に明確にするべき新規事業の“目的”と“意義”――企業が持つべき2つの観点とは?
少子高齢化に伴う人口減少などの社会課題を背景に、日本国内の市場は縮小していくことが見込まれます。そのため、新規事業開発による新市場の創出や開拓の必要性が、今後の日本企業の経営課題として常に挙げられます。オープンイノベーションやリーンスタートアップ、デザイン思考といった理論や手法が普及しはじめ、企業はこぞって新規事業開発に取り組んできました。しかし、まだ十分な成果の創出には至っていないのが実情です。
こうした理論や手法を否定するわけではありませんが、それだけでは、新規事業を成功させるには不十分です。新規事業の成果が出ない要因は、手段ではなく、そもそもの新規事業に取り組む目的や意義が明確になっていない点にあります。
新規事業の目的や意義が定まっていないため、経営陣と事業開発の現場での意識のズレが生じていきます。そして、企業内不和や意思決定のスピード・質が低下し、事業の成功確率を大幅に下げてしまっているのです。
新規事業に取り組む目的や意義は、大きく“事業的な観点”と“組織的な観点”の2つに分けることができます。
事業的な観点では、「企業全体の売上や利益を増加させたい」「経営の安定性や成長性を強化したい」といった狙いがあります。
一方で組織的な観点では、「ゼロから事業を立ち上げる経験を社員に積ませ、将来の経営幹部候補として育成したい」「新しい事業に積極的に取り組む姿勢、風土、カルチャーを発信することで、人材採用の活性化につなげたい」といった狙いがあります。
“事業”と“組織”どちらか一方のために新規事業開発をすることはあまりありません。企業が新規事業を開発する以上、これら2つの観点はどちらも必要になるからです。
新規事業の目的と意義を定める際に、そのどちらを重視するかを、経営者と事業開発の現場は深く考える必要があります。なぜなら、目的や意義によって事業が目指す目線や成功の定義、そしてそこに至るための最適なアプローチが異なるからです。この判断を誤ると、新規事業における失敗のリスクは大きく跳ね上がってしまいます。