「一時的な競争優位」を構築するための6つのステップ
本書では組織の中にこの枠組みを形成し、マネジメントできるようになるために「6つのステップ」を実践することを提唱しています。
- ステップ1.現状を分析し、成長ギャップを明確にする
- ステップ2.上級幹部から支持と資源配分を受ける
- ステップ3.イノベーション管理プロセスをつくりあげる
- ステップ4.システムの構築と組織への導入に着手する
- ステップ5.具体的かつ現実的なことから始める
- ステップ6.イノベーションのサポート体制を築く
この6つのステップのなかでも特に、ステップ1において自社のビジネスチャンスのポートフォリオ分析を行い、自社のイノベーションプロジェクトの現状を知ることが重要です。少し詳細に紹介します。著者はポートフォリオを図4の5つのカテゴリーに分類することを提唱しています。
この図の横軸は「市場の内部と外部の不確実性」、縦軸は「プロジェクト実現に必要な能力や技術の不確実性」を示しています。中核事業とプラットフォームの立ち上げは、既存事業に隣接した領域の投資であるため分かり易いと思います。ここで重要なのは、残りの2つの“オプション”と“足がかり”に対する投資になります。
まず「ポジショニング・オプション」は市場の存在は分かっているが、自社にとって技術や能力の組み合わせが分からない領域。「スカウティング・オプション」は、技術・能力は保有しているが、それが有効活用されるアプリケーション、つまり市場が不明確な領域。そして「足がかり」とは、より長期的に需要が生じ、技術も確立されると予測されるものになります。この足がかり領域では、著者は技術的なハードルはそれほど高くない領域で、アプリケーションの創造で商業化が期待出来る領域を探索することを推奨しています。
このように、既存のプロジェクトをこの5つの領域に分類し、自社の成長のためにはどの程度、「ポジショニング・オプション」「スカウティング・オプション」「足がかり」という3つの新規事業領域への投資配分を具体化することが、ステップ1のゴールになります。
ステップ2~6は、このイノベーションの必要性をいかに上級幹部に理解させ、実行に移していくかが重要になります。しかし私の経験でも、多くのプロジェクトはこの先で頓挫します。そういう中での成功事例の1つとして、「イノベーション・ダッシュボード」が紹介されています。これはプロジェクトが長期的に渡り、進捗が見えにくい新規事業の各種取り組みを“見える化”することで、経営陣の支援が得られやすくするだけでなく、社員に対しても経営陣のコミットメントを実感させることができるというものです。