対話型のAIや画像認識AIを使った「新しいスタンプラリー」で観光の活性化を図る
──石巻市と言えば、石ノ森萬画館もあり、観光誘致には成功しているのではないかと思います。そこで、今回お話しいただく、AIを活用した観光誘致策を実行するに至った背景をお聞かせください。
大森盛太郎氏(以下、敬称略):私ども、株式会社街づくりまんぼうは、石巻市の第三セクターで、石巻市の中心市街地の街づくり事業を通じて、市街地の商業活性化はもとより、広く石巻市全体の活性化に貢献することを目的にしています。もちろん、石ノ森萬画館は、全国的にも知名度が高いのですが、萬画館だけではなく、石巻の街を楽しんでほしいという考えが強いのです。そういった背景もあって、震災前からスタンプラリーをやっていたのですが、これはどこの観光地でもやられていて新鮮味がない。なかなか差別化できないという悩みがありました。
震災後の2012年に萬画館を再開するとき、なにか新しいことができないかと考え、そこで、NTTドコモさんでアプリを使ったスタンプラリーができるという話を聞いて、ぜひやってみたいと考えたのです。
──当時から、今の形で始まったのでしょうか?
大森:最初は「三陸お菓子ラリー」といって、石巻だけではなく、三陸海岸を広く、震災で被害を受けた自治体をまたいで行うものでした。当時は、スマートフォンのアプリでスタンプラリーをするというのは珍しく、話題にもなって、集客効果もありました。ただ、期間限定のキャンペーンでもあり、2015-2016年で終わってしまった。でも石巻では、続けていきたいという考えがあり、ドコモさんに相談していったのです。
──いまは、LINEのトーク機能を使って、チャットボットで対話していくスタンプラリーですが、最初はアプリ型だったのですね。
大森:そこも課題でした。わざわざアプリをインストールしなければならない。それが面倒でスタンプラリーをしないという方もいらっしゃいます。三陸お菓子ラリーも話題になった割には、利用者数はそれほど多くなかった。だから、石巻で新たにやるのなら、手軽にできるものがいいと思っていました。しかも萬画館でやるのではなく、石巻の街でやりたい。だから、市役所と一緒にしなければならないと考えたわけです。
浅野大氏(以下、敬称略):街づくりまんぼうさんからこの新しいスタンプラリーの話を伺って、ぜひやるべきだと感じました。まず、インストール不要で、LINEを使って簡単に参加できる。しかも対話型のAIを活用する、スタンプラリーそのものも画像認識AIを活用するという先進性も興味深かった。話題性もあり、メディアに取り上げられることで、来訪機会の創出にもつながると思いました。
さらに、興味深いのは、観光客のみなさんの情報が入手できることです。通常、観光客の方が何名いらっしゃったかということは、おおまかに把握できていますが、どんな年代の方がいらっしゃって、何時間くらい、どのエリアにいらっしゃったかということは把握できません。こういった定量情報が得られると、次の施策を実行する際に活かすことができます。
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『特集:AIを活用した顧客体験の変革(2) AIを活用した「顧客体験の向上」と「長期的な関係性構築」』(PDF)の収録内容
■収録記事1『小売での“おもてなしイノベーション”に必要な「AIによる店舗のメディア化」と「人材育成」とは?』
・語り手:株式会社トライアルホールディングス 代表取締役社長 亀田 晃一 氏
■収録記事2『復興支援につながるチャットボットを活用した、観光地での「集客」「おもてなし」「リピート」促進施策とは』
・語り手:宮城県石巻市産業観光課観光事業グループ 浅野 大(あさの・ひろし) 氏、高馬 一世(こうま・いっせい) 氏、株式会社街づくりまんぼう(石ノ森萬画館指定管理者)大森 盛太郎 氏、株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 鈴木 信也 氏