課題だらけの飲食業界をテクノロジーが変える“3つの切り口”
──澤山さんはなぜ「レストランテック」に注目されているのでしょうか。
澤山陽平さん(以下、敬称略):レストランテックは、実業の世界にITが入っていく象徴的な存在だからです。少し前まで、飲食店に関するテクノロジーは口コミサイトのレビューくらいでしたが、いまでは裏側のオペレーション部分までテクノロジーが入ってきています。飲食店に行って、スマホやタブレットで注文・決済することが当たり前になってきましたよね。ユーザーの目に入るレベルでITが実業界に入ってきた分かりやすい例がレストランテックだと思うのです。
また、飲食業界にはさまざまな課題があります。時給を上げてもアルバイトの採用ができず、労働力不足が慢性化しています。また、非常に忙しく労働時間が長い業界なので、離職率も高いです。加えて、発注のコミュニケーションの中心が電話やFAXで非効率な状態です。
こうした多くの課題があるため、そこに対する多様なITソリューションが出てきています。決済サービス、オペレーション部分のSaaS、設備のIoT化というソリューションなどがあります。Coral Capitalの投資先にはロボットを使って課題解決を試みている企業もあります。多くの課題に対して、さまざまな切り口でテクノロジーが入っていることからも、レストランテックは象徴的だと言えるでしょう。
──どのような切り口がありますか。
澤山:大きく分けて3つあります。1つは、ユーザーの体験をいかによりよいものにしていくのかという「ゲストエクスペリエンス(接客)」です。オンライン予約サービスや、Uber Eatsもここに含まれます。2つ目が飲食店の業務を効率化する「オペレーション」です。在庫管理や人事労務、アルバイトのシフト管理や採用と、多くのスタートアップが参入しています。3つ目が「ファシリティ」です。POSレジや、いまでは定着しているタブレットレジがここです。ロボットを活用して厨房を効率化するスマートキッチンやデジタルサイネージで参入する企業も出てきています。特に「オペレーション」と「ファシリティ」が最近では盛り上がっていると感じます。
──多くのプレイヤーが出てきているのですね。先進的な例ではどのような企業があるのでしょうか。
澤山:アメリカのChowboticsは、サラダを自動で作るロボットやサラダの自動販売機を提供しています。世界的な健康ブームを背景に、厨房の工数を削減できるロボットが注目されています。同社はすでに日本円で約17億円を調達しています。Zume pizzaの発想も面白いです。デリバリートラックの中でロボットがピザを作り、焼きたてを届けるサービスです。さらに配送ルートもAIで最適化しています。
日本の飲食業界では、人件費が上昇傾向にあります。一方、ロボットの価格は年々下がっています。例えばロボットアームは数百万円で導入することができ、年収ベースでの人件費とロボットの価格の逆転が近づきつつあるのです。加えて働き方改革の流れもあり、これまで常態化していた長時間労働やサービス残業ができなくなっています。そのため、日本でもロボットを導入する流れができつつあるのではないでしょうか。