大半の人はイノベータではない
この本には3つの読み方があります。
一つ目は自分のため。起業家、社内起業家として自分の素質はどうなのか、セルフチェックするためです。ウェブでの自己診断をしたり、本書で紹介されている簡易診断を受けたりするのもよいでしょう。自分がどのような強みを持っていて、どのような弱みを持っているのか、客観的な自己認識は難しいものです。
そして二つ目は、適性を診断することに留めず、適性を高めるためです。『イノベーションのDNA』に示されているのは単に、指標だけではありません。それぞれの力を高めるためにすぐに実行できるアイデアや手法が紹介されています。行動を変えることにより考え方を変えることができ、発見力を高めることができるのです。発見力のうち、4つ(質問力、観察力、ネットワーク力、実験力)は行動的なスキルです。5つ目の関連づける力も実行動によって得られたインプットを高度につなげる力を指します。多くの人は最初からイノベーションのDNAが備わって生まれてくるのではありません。DNAとはいう呼び名ではありますが、スキルは後天的に磨けるのです。
三つ目の活用方法が、著者が最もお勧めしたい使い方、チーム作りのためです 。どのような職場にも創意工夫や新しい発想が必要とは言っても、すべての人が起業したり新規事業を興したりするイノベータとは限りません。むしろ、身近なイノベータの足を引っ張らずに支えたり、発掘したり、協力・補完関係を築く立場の方のほうがはるかに多いわけです。イノベータは普通の考え方をせず、非常識な行動をとるので、周囲から理解されない傾向にあります。そのようなイノベータの力を活かし、イノベーティブなチームをつくるための視点を得ること。これが三つ目の読み方です。