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『繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学 』第2章 全文公開【前編】

クレイトン・M クリステンセン 著 / パーパーコリンズ・ジャパン 刊

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ローカル雇用とグローバル雇用

タイトル図4:市場創造型イノベーションは持続性の高いローカル(本拠地)雇用を生む。

 ローカル雇用とは、本拠地の市場で必要な雇用を言う。他の国に簡単に移転したりアウトソーシングしたりはできない。たとえば、設計、広告、マーケティング、販売、アフターサービス部門の職は一般にこの範疇に入る。グローバル雇用と比較すると概して給料が高い。グローバル雇用は、重要ではあるものの、人件費の安い他国へ比較的容易に移転することができる。よくある例が製造および原材料の調達だ。グローバルのサプライチェーン・マネジメントの進歩により、グローバル雇用には、より効率のいい──つまり低コストの──労働力市場が現れれば、国境を越えてたやすくそちらに流れてしまうというリスクがある。対照的に、ローカル雇用は市場創造型イノベーションを推進するうえで不可欠なので、ほかの国や地域の安い人件費につられて動くことはほとんどない。

 あるプロダクト/サービスを従来は買う余裕のなかった大勢の人たち──無消費者──をターゲットにして、イノベーターが新しい市場を創造するときには、そのプロダクト/サービスをつくるためだけでなく、新しい顧客に届けるための要員も多く雇用する必要がある。無消費が大きいほど潜在市場は大きく、潜在市場が大きいほど影響力も大きくなる。市場創造型イノベーションへの注力は往々にして、社会の基本となるインフラ、すなわち教育や輸送、通信、政策や規制などの管理機構、今日の豊かな社会がもつさまざまな仕組みも構築する。この動きが新市場の開発をさらに進め、好循環を生み出す。

 市場創造型イノベーションへの投資には、地元の起業家がイノベーションを起こして成功した場合、その報酬は同じ地域の将来のイノベーションに投資される可能性が高いという利点もある。現状では、70兆ドル以上に相当するグローバル資産のうち、対外直接投資(FDI)にまわるのはわずか2兆ドルしかない。大半の資金は国内にとどまっている。

 第1章で、いま富裕な国の発展の道筋がすべて市場創造型イノベーションへの投資だったわけではないと述べた。国はそれぞれ規模も能力も特性も異なり、発展のための唯一の戦略はこれだと言い切ることはできない。しかし、今日の貧しい国に繁栄を生み出す最も有効な手段のひとつが市場創造型イノベーションであることはまちがいない。


後編】を読む


『繁栄のパラドクス 絶望を希望に変えるイノベーションの経済学』は【こちら】から購入できます。

繁栄のパラドクス

(目次)
序文
[第1部 市場創造型イノベーションのパワー]
第1章 繁栄のパラドクスとは
第2章 イノベーションの種類
第3章 苦痛に潜む機会
第4章 プル対プッシュ――2つの戦略

[第2部 イノベーションと社会の繁栄]
第5章 アメリカを変えたイノベーション物語
第6章 アジアの繁栄
第7章 メキシコに見る効率化イノベーションの罠

[第3部 障壁を乗り越える]
第8章 イノベーションと制度の関係
第9章 なぜ腐敗は「雇用」されつづけるのか
第10章 インフラのジレンマ

[第4部 イノベーションにできること]
第11章 繁栄のパラドクスから繁栄のプロセスへ
巻末付記 新しいレンズで見る世界
おわりに
謝辞
日本語版解説

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