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中国・百度(バイドゥ)CEOが語る「AI革命」──自動運転、金融、教育と広がる汎用型AIへの挑戦

Vol.8

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 中国にはBATと呼ばれる三大インターネット企業があり、その驚異的な成長ぶりが世界的に注目を集めている。BATとは百度(Baidu)、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent)の英表記の頭文字をとったもの。このうち百度については、日本では検索エンジンの会社としか認識していない人が多いのではないだろうか。確かに百度は検索エンジンとしては中国一、世界でもGoogleに次ぐシェアを誇る“巨人”である。しかし、近年では検索履歴のビッグデータをもとにした人工知能(AI)の開発を急ピッチで進めており、「百度大脳」の名で翻訳や画像認識、音声認識、さらには自動運転や医療の分野などでのAI活用を展開。とくに自動運転に関しては、2017年に世界の有名企業との共同開発プロジェクトや15億ドルのファンドを立ち上げている。本書では、百度創業者で現会長兼CEOの李彦宏(ロビン・リー)氏が、世界のAI開発のトレンドを踏まえながら、自社が推進する「AI革命」の経緯と現状、展望を明らかにする。


百度が蓄積した膨大な検索データをもとにAIを学習させる

 ここ数年来、百度(バイドゥ)はAI(人工知能)の開発に力を注いでいる。

 現存する、あるいは開発中のAIの多くは、インターネット上のビッグデータと結びついている。大量のデータから法則を見つけ出し、その法則を使って演算するのだ。

 AIは「汎用型」と「特化型」に分けられる。今のところ実用化されているのは特化型AIのみである。それは将棋を指したり、画像から人物を特定したりといった特定の機能のみに限定されたAIを指す。それに対し、汎用型AIは、自ら学習し未知の課題を解決する。百度をはじめ、Facebookなどの企業が今、力点を置いて開発に取り組んでいるのは、この汎用型AIの方だ。

 ビッグデータやクラウド、アルゴリズムの精度といった要素が汎用型AIの実力を決める。その度合いは、特化型AIよりもはるかに大きい。その点で、膨大な量の検索データを蓄積している百度には大きな強みがある。私たちが分からないことを検索するたびに、その検索結果は蓄積されていく。そうして膨れ上がったビッグデータが、AIを成長させていくのだ。つまり、百度のユーザーは、意識せずとも開発中のAIをトレーニングしていることになる。

 1949年にドナルド・ヘッブが発見した法則をもとに発展してきたのが、現在のAIの根幹をなすニューラルネットワーク(神経回路網:人間の脳機能をシミュレーションした数学モデル。以下、NNと略)である。その特徴は、人間が指示しなくても、自ら大量のデータの中から「類似している」などの法則を見出せることだ。

 私たちは、自社で開発しているAI「百度大脳」に猫の絵を10万枚読み込ませ、それが正しく「猫である」と認識できたかどうかを確かめる作業を行った。すると、それによって画像識別能力が鍛えられた百度大脳は、人間よりも正確に猫を見分けられるようになった。

 そうして能力が高まったAIは、「検索」を進化させつつある。従来のテキストを打ち込んでの検索の他に、精度の高い画像による検索(類似の画像、関連画像を探すなど)も可能になったのだ。

 このように学習の面でも、実際の技術への応用という点でも、AIと検索は密接に関わっている。それゆえ、中国における検索エンジンのトップに君臨する百度にとって、AIの開発は重要な使命であると認識している。

 2014年に発表され、2016年に公開された「百度大脳」は、百度の保有する膨大なデータを絶えず学習し、成長している。音声認識能力は97%の精度をもち、翻訳能力、画像認識能力もきわめて高い。

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国家の「中国大脳計画」「インターネットプラス」が後押し

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