日本のIT支出は、消費税増税対応やOSのサポート終了対応、働き方改革に伴う業務効率化対応などを背景に、2019年の前年比成長率が3.0%に達する見通し。2020年には前年の反動から0.9%にとどまるものの、2023年まで年平均1.9%増で推移し、29兆円に達するものと予測している。
ガートナーのアナリストでアソシエイト プリンシパルの成澤理香氏は、「金融業界においては、マイナス金利による収益圧迫により業務コスト削減に向けた投資が急務となっているほか、関心の高まるFintechへの規制緩和による追い風もあり、サービスの高度化や顧客満足度向上など競争力強化のためのIT支出が増加しています。一方、運輸業界においては、取扱荷量が拡大する一方で深刻化する人材不足と過重労働により、省力化・自動化・安全対策のためのIT支出が見込まれています」と分析している。
2019年の世界の業種別IT支出では、金融業界の比率が最も高く全体の25%を占めると見積もられている。一方、日本で最も多くを占めるのは製造業であり、その比率は24%と金融業界の22%を上回っている。製造業においては、デジタル化の進展とともに、事業モデルが製品の売切り型から課題解決型へと変化しつつあり、ライフサイクル全体で収益を生み出すスマート製品へのシフトがIT支出の促進要因となっている。しかし一方で、昨今の貿易摩擦や新興国における製品需要の鈍化、原材料費・運送費の高騰など、不透明な経営環境の中、IT支出に対しては慎重な姿勢も見られ、2023年までの年平均成長率は1.4%と底堅く推移する見通しだとしている。