セルフオンボーディングのために必要な“深い顧客理解”とは?
小林 泰己氏(ベルフェイス株式会社、以下敬称略):前編では、トレタさんがやっているセルフオンボーディングについて少しお聞きしました。社員が訪問してのオンボーディングからリモートでのオンボーディング、セルフオンボーディングと進化しています。そして、人からリモート、セルフと変化するごとに、オンボーディング完了までにかかる日数やコストは下がり、アクティブ率はどんどん上がっていったという話でしたね。
高橋昌臣氏(株式会社SmartHR、以下敬称略):トレタさんのように、SmartHRでもセルフオンボーディングを進めたいですね。お客様がサービス活用を学ぶ習慣を身につけると、「じゃあ次はこれをやってみよう」と自発的にストレッチゴールに挑戦するサイクルが生まれると思うんです。それに、SmartHRは機能の追加や改善が多く、それを毎回手取り足取りお伝えするわけにはいかないので、やりながら学ぶ環境に慣れてもらうのは大事だと思います。
小林:機能の追加や変更こそが、SaaSが持つ大きな特徴ですよね。お二人の話を聞くと、最初からセルフオンボーディングを導入する企業が出てきそうです。
鈴木高太郎氏(株式会社トレタ、以下敬称略):これは強く言いたいのですが、最初からセルフオンボーディングにしてもうまくいきません。対面でのオンボーディングを通してお客様と向き合い、業務のディテールや人間心理まで理解できて初めて、内容の取捨選択ができるようになるんです。店舗や企業ごとに具体的なオペレーションは異なります。多くのお客様と向き合って初めて「突き詰めると同じ」という境地に至るのです。その過程を経ることなくセルフオンボーディングを導入しようとしても失敗すると思います。
高橋:完全に同意します。プロダクト提供側の目線で「こうやりましょう」というのは絶対にNGなんですよ。お客様の現場目線に立って初めて見えるものがたくさんあるのです。
小林:最近、オンボーディングを担当しているメンバーとカスタマーマーケティングのメンバーでbellFaceのレクチャー動画を作ったのですが、その動画に対する社内からのフィードバックが、CS部門が1年前に使っていた古い文言でした。動画では、オンボーディングを通じて学んだ、よりお客様に刺さるフレーズに変えていたのですが、お客様に寄り添う経験がないと提供する側の視点になってしまうのだと改めて気づきましたね。
セルフオンボーディングにすでに取り組まれているトレタさんは、今後はどんなことに挑戦したいと考えていらっしゃるのですか?
鈴木:トレタでは、オンボーディングの設定から完了まで業務プロセスの細分化を進めています。そして、説明会のアポ取りなど一部プロセスを外部に業務委託するようにしました。外部への委託比率を全プロセス中の50%にすることを目指しています。