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DXでビジネスも働き方も変わる チームスピリットの荻島浩司が見据える激変の時代の生き残り方

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 1月14日(火)に翔泳社より発売となった『サブスクリプションシフト』。バックオフィスツールを提供するチームスピリットの創業者、荻島浩司氏が手がける本書では、DX(デジタルトランスフォーメーション)によってビジネスや働き方がどのように変化していくのかが語られている。書名にあるとおりサブスクリプションが中心テーマに据えられているが、これはサブスクリプションがDX時代を牽引するビジネスモデルであるためだ。今回は萩島氏にうかがった本書のポイントと、「はじめに」を抜粋して紹介する。

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サブスクリプションシフト DX時代の最強のビジネス戦略』では、DX時代に最も重要なビジネスモデルはサブスクリプションであると述べられている。その要点は、モノ自体の販売から、そのモノが生み出す便益を販売することへの転換にあるという。

 アドビシステムズがプロダクト(の利用ライセンス)販売からサブスクリプションへと転換したことはよく知られている。著者の荻島氏自身も、創業したデジタルコースト(チームスピリットの前身)において2009年頃からビジネスモデルを受託型からクラウドサービス型への移行を実現した。現在は勤怠管理、工数管理や経費精算などを行える働き方改革プラットフォームのTeamSpiritをサブスクリプションで提供している。

 こうした経験から、荻島氏はDXを牽引するのがサブスクリプションだと強調する。日本ではまだソフトウェアなどIT系のサービスが中心だが、MaaSのような移動というサービスを提供するビジネスモデルも誕生している。大切なことは、サブスクリプションが製品ではなく「便益を売る」ビジネスモデルであること。既存の企業がサブスクリプションに取り組む場合、自社の製品やサービスを使用することでどんなベネフィットが生まれているのかをよく理解しなければならない。サブスクリプションは、そのベネフィットに値段をつけて売ることをいう。

 荻島氏は、モノは買ってさえもらえれば効果があろうがなかろうがお金がもらえるが、サブスクリプションだとそうはいかないと話す。多額の初期投資も必要で、そのわりにはすぐに大きな利益が得られるわけではない。サブスクリプションは、実は厳しい選択肢でもあるのだ。しかし、長期的にユーザー数を拡大できれば相応のリターンが見込めるのは間違いない。

 今後ますますDXは進んでいく。サブスクリプションはそんな時代に最も適したビジネスモデルだが、企業は自社の既存事業をサブスクリプション化すればいいのか、それとも新しくサブスクリプションサービスを作ったほうがいいのか。荻島氏は既存事業の性質によると考えている。ソフトウェアの開発・販売を手がけているならベネフィットを取り出して提供しやすいが、受託型の開発をしているならどうか。受託型の企業が提供しているものとは、つまるところ労働力である。まだ具体的な事例はないかもしれないが、受託型の企業がサブスクリプションにチャレンジする価値はあるのではないか、と荻島氏は語る。

 DXはビジネスモデルだけでなく、働き方をも変えていく。本書『サブスクリプションシフト』ではDX以降の働き方の変化についても章が割かれており、生産性と創造性を焦点に、業務効率化の先を目指すための方法が解説されている。それはサブスクリプションサービスを利用する立場からの目線によるものなので、DXがいかにビジネスの現場に浸透していくかが実感できるのではないだろうか。

 最後に、荻島氏がDXがもたらす変革の重要性について解説した本書の「はじめに」を紹介する。本書に興味をもった方はぜひ一読してみてもらいたい。

荻島浩司氏
荻島浩司氏:チームスピリット

「はじめに」より DXによる激変の時代をチャンスに変えるために

 今この時代、私たちは大きな変革期をむかえつつあります。それは産業や社会のさまざまな分野で進行するデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)の波によるものです。そしてこのDXの時代を牽引するのが、本書のテーマであるサブスクリプションのビジネスです。

 DXとは、何でしょうか?

 経済産業省の定義では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とあります。文書や手続きなどの一般的な業務のIT化からさらに進んで、ビジネスのあらゆる分野をIT化して業務を変革することだといえます。

 しかし、こう言われてもなかなかピンとこないのではないでしょうか?

 なぜなら、私たちはすでに「インターネット革命」「IT革命」という言葉と時代の変化を体験しており、既視感をもっているからです。

 ここで強調したいことは、「DX」は、単なる「デジタル化(デジタイズ)」ではないということ。手書きの文書がワープロ化され、アナログレコードがCD化され、インターネット配信されるといった単なる媒体やモノの変化ではないということです。

 出版産業であれば、手書きの原稿のレイアウトやデザインがDTPになること、そこからさらに進んで、電子書籍やインターネットによる書籍販売を行うことがデジタイズであるとすれば、DXとは、出版というビジネスが新たなメディア産業、あるいはまったく新しい産業として変化することといえます。

 DXは、これまでのITやインターネット産業の世界にとどまらずに、全産業に影響を及ぼし、私たちの生活や社会のあり方そのものも変えていきます。産業においては、金融、製造、流通・小売り、交通、医療、そして都市やエネルギーなどの社会基盤のあり方までが、「再定義」されることになります。

 では、このようなDXの時代のビジネスやDXが世の中に与える衝撃を私たちはどこまで構想することができるでしょうか?

 未来を予測することはできません。しかし、過去を振り返ることで変化のイメージを持つことは可能です。

 ここで平成という時代を振り返ってみましょう。平成元年にはインターネットはまだ普及していませんでした。Windows 95の発売が平成7年なので、平成元年はその7年前。その時代に日本企業は世界の中で圧倒的な存在感を示していました。ところが、その後の低迷と閉塞は御存知の通りです。パソコンやマルチメディアで世の中は大きく変わるだろうという予測はありましたが、その時代に、今日のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などプラットフォーマーと呼ばれる企業の台頭は予測できませんでした。

 さらにこれからの10年に起きる変化は、平成の30年間の変化を上回るものになると想像できます。ビジネスにおいてはAIやIoTそして5G通信といったデジタル技術によって生み出される膨大で多様なデータから、これまでにないビジネスモデルを展開する挑戦者が登場し、ゲームチェンジを起こしていくことでしょう。

 こうした産業革命に匹敵する、激変する時代の波を乗り越えていくためには、過去の分析から将来を予測して、少しずつ変化に順応するような今までのやり方は通用しなくなるでしょう。これからは過去とは非連続にいきなり明日をつくり出す、突然変異を生み出すような力が求められます。そのために真の意味での「働き方改革」が求められます。

 その意味での「働き方改革」とは、労務的な意味での制度の改革にとどまらず、個人や組織が生産性を高め、創造性を発揮するための環境をつくり出す経営戦略です。創造性を高めた結果として、画期的な製品やサービスや価値を生み出し、激変の時代に生き残ることが可能になります。

本書の目的

◎筆者と「チームスピリット」について

 そして本書のタイトルの「サブスクリプションシフト」とは、こうしたDXの時代を牽引するビジネスという意味と、人々が創造的に働くための環境をサブスクリプションが実現するという意味をこめています。

 本書が扱うサブスクリプションは、BtoB型の「SaaS/サブスクリプション」が中心となります。すべての企業とそこで働く従業員の方々が、DXによって激変する世の中に対応し、新しいビジネスを創造することを願い、筆者が「TeamSpirit」という製品を生み育ててきた経験を踏まえて、新しいサービスやビジネスモデルの生み出し方について、紹介していきたいと考えます。あわせて、その前提となる「DX時代の創造的な働き方」についても、考察を試みています。

 筆者は2018年8月に東証マザーズ市場に上場した株式会社チームスピリットという会社の創業者です。本書の中で、カタカナで表記される「チームスピリット」は筆者が創業した会社であり、アルファベットで表記される「TeamSpirit」は、そのチームスピリットが提供する製品の名称のことです。

「TeamSpirit」は、SaaS/サブスクリプション型のクラウドサービスで、勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議など、いわゆる企業のバックオフィス業務といわれる、従業員が日々利用する機能を一つに結合し、企業の生産性向上や内部統制の強化を支援する「働き方改革プラットフォーム」です。

 読者の中にはSaaS/サブスクリプション型のクラウドサービスとDXがどう関係するのか疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。

 IT業界には今まで、お客様の課題をシステムの要件として取りまとめ、個別のオーダーを受けてお客様専用の製品を開発する「受託開発型」と、お客様の共通のニーズに基づきメーカー側で汎用的な製品を開発し、そのソフトウェアを商品として売ることで代金を回収する「パッケージ提供型」の二種類のビジネスモデルがありました。

 これに対して「SaaS/サブスクリプション型」とはクラウドというテクノロジーを利用し、ソフトウェア自体を商品として売るのではなく、そこから得られるベネフィット(恩恵)を商品として、利用期間に応じて定額で代金を回収する、まさにソフトウェアをサービスとして提供(SaaS:Software as a Service)する、まったく新しいビジネスモデルです。

 筆者はこの「ITを使い」「製品をサービスとして提供する」「新しいビジネスモデル」という三つの要素が、DXの要諦となる考え方だと捉えています。そのSaaS/サブスクリプション型のクラウドサービスをつくり出した経験から、DX時代の新しいビジネスを創造するヒントがご提供できるのではと考えました。

 チームスピリットも創業当初は「受託開発型」の製造業的なビジネスを行っていましたが、事業展開の中で「SaaS/サブスクリプション型」のサービス業的なビジネスに生まれ変わりました。このDXの要諦となる三つの要素と、DX時代の企業に生まれ変わる(トランスフォームする)方法に関して、業界を問わず、分かりやすく解説しようというのが本書の目的です。

◎本書の構成について

 本書は大きく分けて、「DXの解説」「SaaS/サブスクリプションのビジネスモデル」「DX時代の生産性と創造性」「チームスピリットの創業ストーリー」という四つの内容から構成されます。

 第一部では、DXについて、DXの要諦となる三つの要素の視点から紹介するとともに、SaaS/サブスクリプションというビジネスモデルとの関係を考えます。

 第二部では、SaaS/サブスクリプションがなぜ急成長するのかについて、三つの公式を使い、ビジネスモデルの経済的な側面から説明しようと思います。会計上はつかまえにくい「隠れた価値」やLTVという見えない資産からサブスクリプションを解説します。

 第三部では、SaaS/サブスクリプションのプロダクトの作り方と、私たちがさらに創造性を高めるためにはどうするべきかについて考察していきます。DXがもたらす働き方の変化と次の時代の生産性と創造性について述べます。

 第四部ではチームスピリットという会社が、SaaS/サブスクリプションのビジネスモデルにどのようにトランスフォームしたのか、どのように成長させたのかを紹介します。今後、新しい事業を企画される方に、日本のスタートアップ企業である私たちの経験を通じて、なるべく実践的な方法論をお伝えできればと思います。

 本書を通じて、読者がこれからやってくるDXの時代を機会として捉え、自らのビジネスに活かしていただければ、これほど嬉しいことはありません。

 なお本書は、筆者の個人の主観が強く反映された内容となっています。本書の内容は会社としてのチームスピリットの意見を代表しているわけではありませんので、その点をご理解、ご了承いただければと思います。

サブスクリプションシフト

Amazon  SEshop  その他


サブスクリプションシフト
DX時代の最強のビジネス戦略

著者:荻島浩司
発売日:2020年1月14日(火)
価格:1,600円+税

本書はDXの時代を牽引するビジネスを解説し、新しいビジネスを生み出すための新しい働き方、生産性や創造性についての考え方を紹介します。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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