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MaaSは“単なるアプリ”ではない──「Deep MaaS」と「Beyond MaaS」とは何か?

MaaS Tech Japan 代表取締役 日高洋祐氏 インタビュー【前編】

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MaaSは単なるアプリではない。移動手段を最適化した先にあるもの

──2020年になって、日本でもMaaSに関連したサービスやソリューションが登場してきました。

MaaS Tech Japan 代表取締役 日高洋祐氏(以下、敬称略):配車サービスやライドシェアなど単一のモビリティソリューションは以前からありましたが、統合プラットフォーム型の新たな形態のMaaS事業も活発化しています。とはいえ、少々懸念もあります。まだまだ日本国内では「統合すること」だけがゴールになっていて、その本質的な価値創出に至るケースが少ないように感じています。

 もともとMaaSは、多様なモビリティサービスを統合することで「目的やニーズに応じて、利用者が快適な移動手段を自由に選択できること」を最終目標としています。ユーザーが別々の事業者のサービスを使い分けていましたが、サービスが統合されればユーザー自身で最適な方法を選択できます。

 課題と解決策が「1対1」で存在していたものを、APIで情報やサービスを統合しプラットフォームにすることで、MaaS事業者による「N対N」のマッチングが可能となり、最適な解を提供できるようになります。

 このように説明すると、事例として前回も紹介したフィンランドのMaaSグローバルが提供する「Whim」の個人ユーザーを対象としたMaaSアプリとしての特徴ばかりがフォーカスされてしまいます。そのアプリの実現をゴールとする雰囲気が、日本では見受けられているのです。

 確かに「Whim」は様々なモビリティによる経路探索に加え、チケットの購入や定額制での乗り放題サービスなどが提供されていて大変便利です。しかし、アプリだけでは現在の乗り換え検索の機能追加であり、それはユーザーとモビリティとの接点をつくる「出発点」に過ぎないのです。

 その出発点から「最適なモビリティを選ぶ」という価値をもっと広く提供し、たとえば街全体の最適化に貢献できれば、渋滞緩和や公共交通機関の効率化などの社会課題を解決し、「スマートシティ」のような快適な生活環境を実現する大きな力となります。

 また、モビリティとユーザーの最適化は、それだけで十分にモビリティを保有する事業者にとっては経営インパクトがありますが、業界や業界の枠を越えてバスの乗車率やトラックの稼働率などが上手くコントロールできれば、最適化がもたらす効果はより高くなります。

──MaaSを「移動手段の統合」という側面だけで捉えるのではなく、誰がどのように何に対して使うかという多彩な視点で見ることで、新たなビジネスの可能性が見えてきますね。

日高:もちろん、移動手動の統合だけでも、今は十分なインパクトがあります。しかし、タクシーの配車サービスなどは、既に各国ではユーザーの争奪戦が激化しています。配車アプリ事業には価値はありますが、海外におけるMaaSの取り組みでは、それは出発点として他の事業シナジーを狙う取り組みとして積極的な投資がされています。日本でもMaaSの「その先」を意識することが必要でしょう。

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