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監査は「事後点検」から「異常の予兆把握」へ──トーマツがAIと特許技術で挑む次世代ガバナンス

「監査におけるアナリティクス・AI活用に関する記者説明会」レポート

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 テクノロジーの進化と不確実性の増大により、企業を取り巻く経営環境は劇的な変化を遂げている。この変化は、企業の財務諸表の妥当性を検証する「会計監査」の現場にも、これまでにないパラダイムシフトを迫っている。単に過去の数字を「点検」するだけでなく、経営の異常を「予兆」として捉え、価値ある示唆を提供することが求められているのだ。本レポートでは、有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)が開催した「監査におけるアナリティクス・AI活用に関する記者説明会」を詳報する。登壇した同法人の外賀友明氏(Audit Innovation部長 パートナー)と松本成司氏(パートナー)は、最新のAIモデルや特許技術を活用し、複雑化する不正やリスクをいかに「多面的」かつ「早期」に識別するのか。監査のデジタルトランスフォーメーション(DX)が切り拓く、次世代ガバナンスの姿を浮き彫りにする。

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監査は「事後点検」から「予兆把握」へ

「会計士歴20年の中で、環境は凄まじく変わりました。変化がないことを前提に『確かめる監査』から、変化が当たり前の状況で『異常を見逃さない監査』へと、難易度が上がっています」

 トーマツのAudit Innovation部長を務める外賀友明氏は、冒頭で監査を取り巻く危機感をこう語った。現代の経営層が監査法人に抱く期待は、単なる事後確認にとどまらない。「もっと早くリスクを指摘してくれれば、対応の選択肢が広がったはずだ」という経営層の声に象徴されるように、スピード感を持ったアドバイスや、サステナビリティ(ESG)などの非財務領域への保証へと、その守備範囲は急速に拡大している。

 こうした期待に応えるため、外賀氏は「人力だけに頼る必要はない。医師がレントゲンやAIで病変をいち早く見つけるように、我々もデジタルを活用して不正や課題のリスクを早期識別すべきだ」と強調する。トーマツが進めるアナリティクス(データ分析)の活用は、企業の努力が正当に評価され、社会全体が健全化するという「アウトカム(最終的な成果)」を目指したものだ。

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 具体的には、過去の課徴金事例や決算訂正事案のデータをAIに学習させ、現在の監査対象データと比較することで、「過去のどの不正事例に酷似しているか」をスコアリングする予兆把握モデルなどを展開。業種やビジネス特性に応じた多様なAIモデルを使い分けることで、精度の高い「診断」を実現している。

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巧妙化する「循環取引」の兆候を掴む、AIによる統合スコアリング

 続いて登壇した松本成司氏は、監査の高度化を実現する具体的な手法として、トーマツが開発した「取引の多面的リスク評価モデル」を解説した。このモデルがターゲットとするのは、極めて発見が困難な「循環取引」などの不正だ。

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 循環取引とは、複数の企業間で商品の転売を繰り返し、実態のない売上を計上する手法を指す。こうした不正に絡む取引は巧妙に隠蔽されるため、データ上は目立たない「平均的な数値」に擬態していることが多い。

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 「突出した外れ値はないが、売上増加率が少し高い、単価が少しおかしい、粗利率が少し動いている。こうした『微細な違和感』を積み上げれば、大きな不自然さが見えてくる」と松本氏は指摘する。

 従来の監査手法では、単一の指標(例:売上の急増)に注目するため、個々の指標がボリュームゾーンに埋もれている取引を見逃すリスクがあった。新モデルでは、複数の「シナリオ(視点)」を各取引に当てはめ、平均値からの乖離度をスコア化。さらにAIが各指標の重要度に応じて重み付けを行い、「統合スコア」を算出する。これにより、一見正常に見える取引の中に潜む多面的なリスクを浮き彫りにすることが可能になった。

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監査における「専門家人材」と「AI」の協調

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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