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行動経済学をビジネス実務に落とし込む

なぜ行動経済学はビジネスの実務で活かしきれないのか──マーケティングを補完する学問の“3つの課題”

第1回

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 今、最もホットなビジネス理論の一つである「行動経済学」。2017年にリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したり、政府の新型コロナ対策に行動経済学者が任命されたりするなど、今もなお継続的に注目されています。しかしながら、その注目に反して、なぜかビジネスプラニングの表舞台に上がってくる機会は少ないと感じます。興味を抱き様々な関連書籍を購入するものの、難しい名前の理論に圧倒されてしまったり、事例を実務に“転用”する方法がわからなかったりし、活用を断念したという声もよく耳にします。  では、ビジネスへの転用を阻害する要因には何があるのでしょうか。行動経済学の様々な理論を、ビジネスやマーケティング領域に落とし込むための方法論とは何でしょうか。その手順論と、それに基づく様々な参考事例について、本連載では「実務家の視点」で伝えていきたいと思います。

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ビジネス戦略の突破口となる“行動経済学”とは

 どこをみても類似の商品やサービスが溢れており、生活者の基本的な欲求もほぼ満たされているといっても過言ではありません。ほとんど全ての業界が成熟している現代において、商品/サービスの魅力を理屈だけでストレートに訴求したとしても、「欲しい」という感情を生み出すことは難しいでしょう。理屈だけでは突破できない昨今の成熟化社会において、生活者の理屈だけではない判断、つまり感情的、非論理的な判断や選択のメカニズムを説き明かし、それを逆手に取った攻略法が必要となります。つまり、これからの時代は、“心のスキ”を突く手法こそが事業戦略やマーケティング戦略を考える上での突破口になりえるのです。

 このような「時代からの要請」に呼応するかのように、行動経済学の権威であるシカゴ大学のリチャード・セイラー教授が2017年にノーベル経済学賞を受賞しました(その前は2002年に、ダニエル・カーネマン教授が同賞を受賞しています)。それをきっかけに、改めて行動経済学がクローズアップされることとなり、ここ数年、行動経済学の各種理論を解説する書籍も数多く刊行されています。

 実際、政府も行動経済学を政策に採り入れる動きを見せています。2019年には経済産業省が「METIナッジユニット」を組成し、セイラー教授が提唱している「ナッジ」の政策導入検討を始めました。直近では、新型コロナウイルス対策の専門委員会である「基本的対処方針等諮問委員会」のメンバーに、日本の行動経済学の権威である大阪大学の大竹文雄教授が任命されています。

 では、行動経済学とはどのような考え方をするものなのでしょうか。一般的な行動経済学の定義に「経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法」というものがありますが、これではビジネスの実務に採り入れるには難しそうに感じますよね。実務家の視点から行動経済学を一言でまとめると「人間の非論理的な心理作用やそれに基づく判断を活用したアプローチ」となります。

 行動経済学と最も親和性の高い領域はマーケティングです。次のページからは、従来のマーケティングが見落としていたポイントと、それを補うことが期待される行動経済学についてご紹介していきます。

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この記事の著者

楠本 和矢(クスモト カズヤ)

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