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行動経済学をビジネス実務に落とし込む

行動経済学の27の理論を実務家目線で整理する──全体像を掴む“4つのカテゴリー”

第2回

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 前回は、最もホットなビジネス理論の一つである「行動経済学」についての基本的な概念のご紹介と、マーケティング戦略を補完するものとしての行動経済学の有用性についての見解を述べました。今回はさらに一歩踏み込み、行動経済学の各種理論を、マーケティングに使えるものをピックアップして整理していきます。行動経済学の教科書で紹介される分類とは異なる部分もありますが、皆さんがイメージしやすいよう実務家目線で分類している点ご了承下さい。

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行動経済学の各理論を“4つのカテゴリー”で整理する

 本連載では次回以降、行動経済学の理論をマーケティング施策に落とし込む「切り口」について紹介していきます。今回は、その「切り口」で取り上げる各種理論を一通りご紹介し、全体像を掴んでいただきます。

 行動経済学の各種理論は、範囲が広いこともあり、やや散らかった印象を持たれることも多いかもしれません。そこで、“マーケティング戦略に使えそうなもの”だけをピックアップし、以下の4つに分けて整理しました。

  1. 限られた情報で短絡的に判断してしまう
  2. 「先よりも今」「得よりも損」を過大に評価してしまう
  3. 何を基準にするかで、評価や判断の内容が変わってしまう
  4. 見せ方や並べ方を変えるだけで、判断が変わってしまう

 あらかじめ2点お断りをします。まず、これらは行動経済学の理論すべてを網羅したものではなく、マーケティング施策の検討に使えそうなものだけをピックアップしたものだということ。もう1点は、教科書でよく見かける区分ではなく、できるだけ全体像を掴んでもらえるようにした私のオリジナルな整理法だということです。そのため、教科書ではセットで説明されている理論が、別のカテゴリーに入っていることもありますがご了承ください。

1.限られた情報で短絡的に判断してしまう

 生活者は、自分の経験や記憶をもとに深く考えず判断してしまう傾向があります。あまり判断に労力を割くことなく、なるべく素早く、そして効率的に意思決定したいと考えてしまう傾向を、行動経済学では「ヒューリスティクス」と呼びます。これはあくまでも過去の経験や記憶に基づいた、いわば簡略化された思考に基づく判断であり、論理的な思考というわけではありません。

 今の世の中、似たような情報があまりにも溢れすぎており、一つひとつを吟味したり、内容の信憑性を確認したりすることはなかなかありません。この状況を逆手にとり「限られた情報」で印象付け、興味を持たせるというアプローチは、有効な方法だと言えます。

 このカテゴリーに含まれる理論を、さらに3つに分けて整理しました。

①一部の目立つ情報だけで、短絡的に判断する

  • バンドワゴン効果:人気を多く集めていることがわかると、元々関心がなかったにも関わらず、興味を示してしまう
  • ハロー効果:ある「目立つ特徴」に引きずられ、それだけで評価がポジティブ(ネガティブ)に振れてしまう
  • 希少性の法則:「いつでもどこでも入手できるもの」よりも「入手しにくいもの」に価値を感じてしまう
  • ジンクビリチオン効果:聞いたことのない、凄そうな言葉の響きだけで、「何となく良さそう」と短絡的に判断してしまう

②情報の「与えられ方」だけで、短絡的に判断する

  • ザイアンス効果:何度も繰り返し接触させられることによって、警戒心が薄れ、次第に好印象を持ち始める
  • ウィンザー効果:提供者から直接アピールされるよりも、第三者から間接的に聞いた情報の方が信じやすい
  • 返報性の原理:最初に人から何かの施しを受けた際、ポジティブな行動 で返さなければいけないと思ってしまう

③元々の「自分の考え方」が働き、短絡的に判断する

  • 確証バイアス:自分の考えを正当化するために、それを証明する情報ばかりを探してしまい、ネガティブな情報に目がいかなくなる
  • 一貫性の法則:自分で決めたことについて、最後まで一貫性を持った態度をとろうとして、それに反する行動を避けてしまう
  • ヴェブレン効果:「それを購入した自分」をアピールしたいという欲求が働き、高額な商品を購入したいと考えてしまう

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この記事の著者

楠本 和矢(クスモト カズヤ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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