リモートワーク環境下の1on1マネジメント
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の緊急事態宣言は解除されたものの、多くの企業ではリモートワークへのシフトが続いている。その過程で以下のような課題への対応が組織の明暗を分けつつあると、徳谷氏は語る。
- 離れた現場で、それぞれの仕事をしているため、コミュニケーションがとりにくい
- ロイヤルティーが下がり、チームとしての成果が出しにくい
- 経営や人事として、制度・仕組みをどう考えたらよいのかわからない
徳谷氏は、「リモートワーク化により、対面での“空気を読んだマネジメント”や横並びに仕事しながらなんとなく“阿吽の呼吸で行っていたマネジメント”ができなくなったことに加え、お酒を交えたコミュニケーションの機会を作るのも難しくなりました」と自身も感じたマネジメント環境の変化を挙げる。リモート環境下においては、「マネジメント中間層の役割が非常に大事」「正しい1on1が重要」「1on1におけるフィードバックのクオリティーで個人も組織も成果が大きく変化する」のだという。
では、部下との間に物理的距離が生まれた今、1on1はどのように実施するべきなのか。実際に、リクルートやユーザベース等の1on1の仕組みの設計に携わる徳谷氏は「リモートであってもやるべきことは基本的に同じ」とした上で、以下のような手順を基本として進めるべきだと話す。
- アイスブレイクとゴール確認
- セルフフィードバック(部下による振り返り)
- プラスの面をほめる+改善すべき点を伝える(サンドイッチ方式)
- 課題の整理・アクションプラン設定
- これからの期待(前向きな内容)
「当たり前のお作法を学んでマネジメントをするかしないかでまったく成果が異なります。単純に聞こえますが、実際マネジメントは我流の方がほとんど。高いレベルでできている上位者はほとんどいません。順序でいえば、アイスブレイクは、話しやすいポジティブな話から始め、まずは期間のゴールや目標を簡単に確認することです。次いで大切なのは、1on1では上位者が一方的に話すのではなく、『セルフフィードバック』として、“本人(部下)がどう思っているのか”を十分な時間をとって聴くこと。その上で、『プラス面』で何ができたか、『改善点』で何ができなかったのかを伝えるサンドイッチ方式を採り、『課題整理・アクション設定』から『前向きな内容・これからの期待』へと続けていくとよいでしょう」
加えて、徳谷氏はフィードバックのクオリティーを高めるポイントを紹介した。
「1on1では、上位者側の『傾聴』がポイントです。マネジメントをされている方に実際の様子を聞くと、傾聴に心掛けていると思っていても、実際は上司がほとんど話をしているというケースも多い。話をする割合の理想は逆で、上司3割、部下7割です。また、アクション設定をする場合には、『○週後までにこんなことをしてみよう』というよう具体的な設定をすることも大切です。そのアクションは、上位者主導ではなく、できるだけ本人に考えてもらうことです。また1on1の時間は1回を長くとるより、1回当たりを短めに30分前後とし、頻度を上げる方がよい。週1回から2週に1回程度が理想です」