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インテル野辺氏「未来のクルマのために、脳の話をしよう」

インテル 野辺継男氏「データサイエンティストサミット」講演

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データサイエンティストサミット2014(翔泳社主催)でインテル野辺継男氏がおこなった講演、「コネクテッド・カーとデータサイエンスの衝撃〜IoTと自動運転が実現するクルマ社会のイノベーション」の内容をお届けする。

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ビッグデータ時代、クルマはセンサーに

あらゆるものがインターネットに繋がるIoT(Internet of Things)の世界。その一つの代表格がクルマだという視点でお話したいと思います。

コンピュータは何れ脳に近づくという話が以前からあります。2023年頃には1000ドルのコンピュータが人間の脳と同じぐらいの処理能力を持ち、2045年になると全人類の脳を足したものと同程度になると、今はGoogleにいるレイ・カーツワイル氏は、1990年代から予測していました。 人間の脳は約1000億個のニューロンと、その一つ一つが約1000個のシナプス接続でネットワーク化されていると言われており、それと同等のシステムを半導体とネットワークで構築出来れば、人間の脳の構造に近いコンピュータが生まれる可能性があります。

あるいは、そこまで行かなくとも、少なくとも脳の一部の機能だけでも、コンピュータとネットワークで再現されれば、これまで不可能であった人間に近い認識・分析・判断が出来て、人間を補助するサービスが実現されるものと考えられます。

こうした脳に近いコンピュータは、いずれ単体の商品として実現されるでしょう。現在でもすでに、クラウド上で莫大な量のコンピュータが繋がり合っていて、人工知能がクラウド上に宿る状況に近いといえます。音声認識にDeep Learningを応用したGoogleの音声検索などは、その一例です。

そうした動きがIoTと絡み、そう遠くない将来、クラウド上の人工知能がクルマに繋がり自動運転を支援する可能性が十分あります。そもそも自動運転とは、人間が運転する代わりにコンピュータがクルマを運転するというものです。全てをクラウドに依存する事はないとしても、いずれクラウド上に宿る人工知能を利用する事も視野に入れて開発を行う必要があります。 その為に、脳神経科学や認知科学的アプローチに加え、コンピュータネットワーク視点からも脳の機能を分析し理解することが重要、という話になるわけです。

私は2012年に、インテルに入る前の8年間、日産自動車で「クルマにITを入れたら何が出来るか」というテーマに取り組み、クルマとITの融合という視点でいろいろと先進的な事をやらせて頂きました。また、それ以前、ソフトバンクがYahoo!BBとしてADSLをサービス開始したとき、韓国の世界最大のオンラインゲーム会社とソフトバンクのジョイントベンチャーを立上げ、その国内導入を行わせて頂きました。実はこの経験が、現在の私のクルマへのITの適用に生きています。

このオンラインゲームはMMORPG (Massively Multi-client on-line Roll Playing Game)というジャンルで、一つのサーバに5000人のPCユーザーが同時に接続し、サーバ内に存在する仮想地図上でプレイするロールプレイングゲームです。ロールプレイと言っても行動のストーリーや選択肢がゲーム製作者側から与えられている訳では無く、そのゲームに参加するプレーヤーのリアルな人間関係でゲーム性が生まれます。実際人間の思いや行動をそのままサーバ上で再現する訳で、ネットワーク帯域の太さ(ブロードバンド性)よりも常時接続性と低ネットワーク遅延(33m sec以下)の通信環境が重要であり、そのためYahoo! BBのADSLが必須だったわけです。

そこで実現した基本要素はゲーム内での多様なチャット機能であり、現在広く普及しているSNS的な人と人のつながりであり、更に仮想貨幣や金融経済の分析を含むゲーム・バランスの管理でした。こうした意味でMMORPGは2001年にしてビッグデータやデータアナリティクス的なネタの宝庫でした。

インテル株式会社 戦略企画室 ダイレクター 兼)名古屋大学 客員准教授 野辺 継男 氏

正に最近のインターネットを用いた多くのサービスの基本形がここに存在していました。それを日産に入りクルマに応用した訳です。不特定多数のPCをクルマに置き換える。クルマをセンサーと見立て、位置、速度、ABS稼働、充電、バッテリ、ワイパー等の情報を携帯電話網を用いてプローブ情報としてサーバに上げ、分析した結果を情報としてドライバーにフィードバックする、という訳です。

クルマの位置情報を時間経過で分析すれば渋滞情報が判ります。更に統計的な処理を施せば、今後の渋滞の変化も予測も可能となり、これから走る道の渋滞を可能な限り回避する事ができます。 電気自動車(EV)が充電されれば、EVは自分が何処で、何ボルトで、何アンペアで、どれだけの電気量を充電されたかわかります。それらを、通信を介してサーバに上げる事でバッテリの状態を管理する事も出来ますし、不特定多数のEVが同じ場所で新たに充電を開始している事が判れば、新規の充電スポットとして登録する事が出来ます。更にはサーバを介してスマートグリッドや家庭のHEMSとの融合も考えられます。

また、特定のエリアでのみ多くの方々のワイパーが「強」となっていれば、ゲリラ豪雨が発見できます。クルマが走っていてABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が起動したとすると、時間、場所、気温、天気などの追加パラメターと合わせて分析する事により、道路上のスリップ箇所が推定できます。

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