DXの目的設定で欠かせない“外国人市場”とは
「現在、様々な企業がDXを推進しています。しかしDXの方法を間違えて、DXすること自体が目的になってしまった場合、それが事業の成功と失敗を分けてしまうこともあります」
講演冒頭で小林氏はこう語り、とある事例を挙げた。その事例とは、コロナ禍で躍進したNetflix社と2013年に倒産した米国のBlockbuster社である。
ともに、20年前はビデオ・DVDのレンタルチェーン店という実店舗でのビジネスを手掛ける企業だった。ところがNetflix社はグローバルにエンターテインメント体験を提供するという目的を見出し、それを成し遂げるには店舗では対応しきれないと、手段の変化としてストリーミングサービスへと移行した。一方、Blockbuster社は、店舗とデジタルでハイブリッドにエンターテインメント環境を提供することを目的として、店舗で顧客のUSBメモリーやデジタル端末に動画ダウンロードするという手段をとった。その結果が、Netflixの躍進とBlockbusterの倒産である。目的と手段の差が、事業の明暗を分けたのだ。
では、どんなことを意識してDXの目的を考えればいいのだろうか。小林氏が指摘するのは、外国人市場の重要性の変化である。“外国人市場”とは、大きく以下の2つに分けられる。
- インターネット上で接する外国人
- 母国以外に住む外国人
現在、世界人口は約78億人。そのうち59%である45.4億人がインターネットユーザーと言われている。インターネットには国境がないので、多くの人が世界の情報にアクセスできる。一方で、インターネットユーザーのうち、日本語ユーザーの割合は3%のみである。つまり、日本語のみでサービスを提供しているということは、非常に小さな市場を相手にしているのと同義である。
オフラインの世界に目を向けた場合も、外国人の存在は無視できない。先進国と新興国には、所得格差が2倍以上あると言われている。その結果、新興国から先進国への人口流入が加速している。Wovn Technologiesの独自試算によると、現在、全世界で3億人以上が母国以外で生活していると考えられる。日本は世界で7番目の移民大国であり、国内に273万人の外国人が暮らしている。これは無視できないほどの大きな市場である。