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デザインリサーチとは何か

デザインリサーチとは何か──イノベーションドライバーとして存在感を増すデザインのキープロセス

第1回

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 連載「デザインリサーチとは何か」では、著書『デザインリサーチの教科書』のエッセンスを中心に、デザインリサーチとは何か、その具体的なプロセスを解説する。今回は、イノベーションドライバーとして「テクノロジー」以上に存在感を増す「デザイン」、経営にデザインが求められる背景、デザインリサーチとは何かの概要をお届けする。

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「イノベーションドライバー」として存在感を増すデザイン

 私たちはイノベーションを創出することが求められている。イノベーションはテクノロジーの進歩によって成されるものと認識されることが少なくないし、これはある面において事実であろう。

 一方で、必ずしも技術革新を伴わないイノベーションも存在する。何らかの新しいプロダクトやサービスを通して人々に新しい価値を提供し、社会に対してポジティブなインパクトを与えられるのであれば、そのプロダクトやサービスに新しいテクノロジーが組み込まれておらず、既存の技術を組み合わせてプロダクトを実現したとしても、これをイノベーションと称することに大きな違和感はないだろう。

 AirbnbやUberなどに代表される企業は、必ずしも先進的なテクノロジーを訴求して市場に登場したわけではない。彼らが高度なIT技術を駆使してサービスを提供していることは間違いないが、必ずしも最先端のテクノロジーを使わなければ実現できない類のサービスではない。

 今となっては人々がこれらのサービスに価値を感じていることは説明するまでもない。しかしAirbnbやUberの創業者たちは、人々が求めているものを、他の誰よりも早く発見し、適切な形でプロダクトとして社会におくりだした。つまり、人々のニーズや要望を見出すこともイノベーションの実現に大きな貢献を果たしていると言えるだろう。

 イノベーションを実現するための推進力を「イノベーションドライバー」と呼ぶ。イノベーションドライバーは最先端のテクノロジーである場合もあるが、人々のニーズやそこから生まれたコンセプトである場合もある。これまではテクノロジーをイノベーションドライバーとして扱う場合が多かったが、現代においては必ずしもそうではない。

 現代は人々のニーズが多様化し、変化のスピードがとてつもなく早いために、従来型のものづくりの方法では競合他社に対する優位性を確保することが難しくなっている。

 ロジカルシンキングと呼ばれる思考法があるが、インターネットの普及により情報取得のハードルが従来よりも下がったため、誰でもデータから論理的に仮説を積み上げれば同じ結論を導き出すことができる世の中になったと言われている。現代では、そもそもすべてのデータを正確に集めることができず、これまでのロジカルシンキングが通用しなくなってきている。

 そのため競合他社が持っていない情報をいかに得るかが重要である。サービスデザインでは顧客に対するインタビューなどを通して情報を集めるが、その際には「主観」を重視する。定性と定量調査を組み合わせることによって競合他社が気づいていないイノベーションの機会をいち早く見つけ、適切な解決策に落とし込む。

 人々のニーズをいかに見つけることもテクノロジーと同様に、あるいはそれ以上に重要であると考えられるようになってきている。

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この記事の著者

木浦 幹雄(キウラ ミキオ)

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