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デザインリサーチとは何か

アップデートが前提の“終わりなき”プロダクト開発──「デザインリサーチ」の役割と範囲とは?

第2回

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 前回は、イノベーション推進において存在感を増すデザインに関して、デザインプロセスにおけるデザイナーの役割、問題発見と問題解決の分離などを解説した。今回は、デザインリサーチの主戦場であるプロダクト開発におけるデザインリサーチを解説する。そもそも、プロダクトとは何か、現在のプロダクトの定義や範囲を概観し、その上でデザインリサーチに何が求められているのかなどを筆者の業務経験などにおける知見も交えて考察する。

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そもそも「プロダクト」とは何だろうか

 私たちは「プロダクト」という言葉を何気なく使っている。プロダクト(Product)は日本語で「製品」と説明され、何らかの物理的な形を与えられたモノをイメージすることが多いだろう。同様に、プロダクトデザイナーといえば家具や電化製品、食器、文房具、乗り物など、モノとして存在する製品に携わるデザイナーを指すことが一般的であった。

 しかし近年、この「プロダクト」という言葉が指し示す範囲が急速に広がっている。例えばiPhoneアプリのように、それ自身ではモノとしての実体を持たないものをデザインすることをプロダクトデザイン、あるいはアプリをデザインする人をプロダクトデザイナーと呼ぶことも増えている。つまりプロダクトとは、物理的なモノの有無に限らず、人々や社会に価値を提供するためにデザインされた成果物のことであると考えられる。

 ここで述べる成果物とは、必ずしもユーザーに提供されるアプリケーションの形を取るものではない。会員登録やショッピングカートのようなアプリケーションの機能をプロダクトとして扱う場合もある。これは自動車をプロダクトとして捉えることもできる一方で、エンジンやタイヤ、カーナビのような自動車を構成する様々な部品をプロダクトとして扱う場合があることと大きな違いはない。

 また、アプリそのものだけではなく、アプリを通して提供されるサービスをプロダクトとして扱う場合もある。その一例としてUber Eatsが挙げられる。Uber Eatsは御存知の通りWebサイトやスマートフォンアプリから食事を注文すると、注文した飲食物が自宅まで届くサービスである。Uber Eatsは食事を注文するためのスマートフォンアプリを提供しているが、この食事を注文するためのアプリのみで完結し、利用者が価値を享受できるわけではない。このアプリはあくまでも注文者が食事を注文するためのインターフェースとしての役割を担い、このインターフェースの裏側には注文者の注文を受け取る飲食店、飲食店に飲食物をピックアップしにいき、それを注文者に届ける配達員が存在する。注文者、飲食店、配達員の三者が、それぞれの役割に向けて提供されるアプリを利用し、それぞれに求められる行動を取ることによって、注文者はアプリで注文した飲食物を自宅で受け取ることができる。この仕組みは特定の目的を達成するためにデザインされたものであり、この仕組みこそがプロダクトであるといえる。

 なお、プロダクトの中には目に見える形でデジタル技術を伴わないものもあるだろう。図書館や空港、百貨店のような施設をプロダクトとして捉えることもできるし、それら施設を中心として利用者に提供する一連のサービスをプロダクトとして捉えることもできる。自動車を例に挙げるならば、自動車そのものもプロダクトであるが、ディーラーでの販売から、車検や修理などのメンテナンスサービス、買い換える際の下取りまで一連のサービスをプロダクトとして捉えることもできる。

 このようにプロダクトとして扱われる対象が大きくなるにつれ、検討すべきことは指数関数的に膨れ上がる。人々がプロダクトをどのように使うかについても様々なケースが想定されるだろうし、プロダクトに関わるステークホルダーの数も多くなるだろう。ヘルスケアに関するプロダクトであれば、医者や患者だけではなく、病院に関連して働く様々な人々や患者さんを支える様々な人々、その他行政の人々をステークホルダーとして捉える必要があるかもしれない。もちろんプロダクトが複雑であれば複雑であるほど、プロダクトを作り、世に送り出すためには工数が必要で、様々な専門分野の人々が力を合わせなければならないことを忘れてはならない。

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この記事の著者

木浦 幹雄(キウラ ミキオ)

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