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経営参謀としてのCFO

なぜワールドクラスはメガトレンドを戦略に落とし込めるのか──“阿吽の仕組み型”による企業経営

ゲスト:一般社団法人日本CFO協会/一般社団法人日本CHRO協会 主任研究委員 日置圭介氏

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中期経営計画に一生懸命になる日本企業の“もったいなさ”

石橋善一郎氏(日本CFO協会 主任研究委員兼FP&Aプロジェクトリーダー、以下敬称略):共著書では、日本企業とグローバル企業の「中期経営計画」と「ミッドターム・プラン」「コミットメント・プラン」の違いにも触れられています。

日置圭介氏(日本CFO協会 主任研究委員、以下敬称略):今では変わりつつありますし、抜本的に見直そうとしている企業もありますが、これまで多くの日本企業は3~5年ごとに一生懸命に外部環境を予測して、それに自社の各事業の計画をくっつけて、中期経営計画(中経)を策定していました。

 これはいろいろな意味で残念な作業だと思うのです。経営層が長期的な目線で物事を考えるのが、そのときに限定されるべきではありません。また、そのために世のトレンドに関する膨大な資料収集、コンサル会社や調査会社への問い合わせなど、キュレーションを担っている経営企画の優秀な面々の工数ももったいない。これだけ動きが速い世の中で、3年目の数字なんて正確に作りようがないと分かっていながら、確からしい根拠づけのために腐心する。そしてこれだけ苦労したにもかかわらず策定終了した途端に過去のものとなる。中計に経営に必要な要素を全部詰め込むから無理が生じているような印象があったので、かつて私は、この状態を“中計病”と表現していました。

 私がいた当時のIBMはどうだったかというと、毎年春にこの先2~3年分の流れを見て「ミッドターム・プラン」を作っていました。この大きな方向性の議論に即した形で、秋に足元の年度予算である「コミットメント・プラン」の数字に落とし込んでいくというサイクルを回します。こうすると、2~3年先の見方も毎年更新した後に、直近でコミットする内容を固めることができて現実的です。他の多くのワールドクラスも同様のマネジメントサイクルで経営を回していると思います。

 ですから、よく「外資系はショートターミズム」と言われますが、そういう面がないわけではないけれども、それなりに先を見据えた上でのマイルストン目標になっています。

タイトル図版出典:『ワールドクラスの経営』P123 図表3-4を参照し作図(ダイヤモンド社・刊)

石橋:この図は日置さんが作ったのですよね。

日置:そうです。IBMに加え、デュポン、GE、3Mなどのプラクティスを共著者に聞き、いいとこ取りをして作りました。

石橋:メガトレンドをもとに、どう戦略に落とし込んでいくかという流れが理解できますね。

日置:3年に一度ではなく毎年ミッドターム・プランを考えることで長期と短期を繋いでいると言えるのかもしれません。常に向かう先を見られる状態を作っているということは、日頃からそれ以上に長い時間軸で物事を見る必要性を示していますし、実際に経営陣はそのような時間軸で経営を考えている。CxOが世の中の動向や競合の動き、自分たちの事業や技術の“廃れ度”などを含めて見据えることが常態化しているのは、中計のタイミングだけで一生懸命先を読もうとする一部の日本企業とはまったく違いますよね。

 経営層の皆さんは優秀で高い一般教養もあります。でも、天才的な創業経営者ではないとしたら、世の中にどんな動きが起こっていて、それが自社にとってどう影響を与えうるのかという思考を回し続けることが必要です。また、それを意識的にマネジメントプロセスに埋め込んでいくことが重要です。石橋さんが在籍されていたインテルのアンディ・グローブ氏も言っていましたよね。常にターニングポイントを掴む努力をしなくちゃダメだと。

石橋:「Strategic Inflection Points(戦略転換点)を見極めろ」と言っていましたね。

日置:そうするためには日頃から見続ける、議論し続けるということが当たり前にならないといけないですよね。バックキャスティングという言葉があります。最近、少しバズっているようにも思いますが、望ましい未来から逆算して今やるべきことを考えるということです。重要な考え方ですが、それ以前に健全なフォーキャスティングもできないようならば、描き出した未来は都合のいい、危うい像になっているかもしれません。行ったり来たりと大変ですが、両方向の思考を回すことが必要です。

タイトル図版出典:『ワールドクラスの経営』P127 図表3-6を参照し作図(ダイヤモンド社・刊)

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