本レポートによると、足元の危機により、顧客とブランドの関係が根本的に変わりつつあり、生活におけるあらゆる側面がその影響を受ける一方、顧客との良好な関係性において鍵となるのは、共感、パーソナライズ、利便性、デジタル変革であることが明らかになったという。また顧客が社会における企業の役割を再評価する中で、「ステークホルダー資本主義」という考え方が購入判断に影響する傾向が強まっている。
日本からの回答者650人を含む全世界27ヵ国から15,000人以上の消費者と法人顧客のインサイトをまとめた本レポートは、顧客の成功を後押しする企業の変革の支援を目的としており、本調査は、以下の4世代の顧客を対象としている。
- ベビーブーム世代(1946〜1965年に生まれた世代)
- X世代(1965〜1980年に生まれた世代)
- ミレニアル世代(1981〜1996年に生まれた世代)
- Z世代(1996年以降に生まれた世代)
本年の「コネクテッドカスタマーの最新事情」で明らかになった主な傾向は以下のようになっている。
危機の最中は顧客とのつながりが極めて重要
2020年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、顧客とブランドの関係はすっかり変貌。不安と混乱が広がる時期だからこそ、ブランドにとっては新規顧客かロイヤルカスタマーかにかかわらず、信頼を強化・再構築する好機となる。実際、日本の顧客の92% が、「危機の最中にどのような行動を取るかで信頼できる企業かどうかがわかる」と回答している。
顧客を理解し、利便性を提供することが差別化の要因になる
人々が変化と不安の時代を乗り切ろうとする中、顧客一人ひとりのニーズや期待、問題に対して親身になって向き合うことは、ストレスの多い時期に余計な負担を感じさせず、利便性の高いコネクテッドエクスペリエンス(あらゆるタッチポイントにおいてつながりのある体験)を提供することと同じくらい重要。日本の顧客の64%が「全般的に営業、サービス、マーケティングの部門間で情報が共有されていないように感じる」と回答している。
正念場を迎えるデジタル変革という必須課題
顧客が今後長く続くであろう新しい生活習慣を身につけたことにより、デジタルファーストの行動も生活にすっかり浸透。デジタルエンゲージメントが拡大する中、顧客は企業が業務をデジタル化しながらも、マルチチャンネルで人間味のある対応をすることに期待するようになった。そのためには少なからず個人情報を活用することが必要であり、顧客は透明性の向上と管理の強化を求めている。日本の顧客の54%が、新型コロナウイルス対策として企業がデジタル化を加速させることを期待している。
顧客はブランドが企業理念を示すよう求めている
長年の懸案である社会、経済、環境問題がいよいよ顕在化し、企業はその解決に向けて貢献するよう求められている。株主だけでなく、すべてのステークホルダーへの責任を全うすることができなければ、収益に影響する。日本の顧客の86%が「企業の社会的役割は変化しつつある」と回答している。
今後の展望:各セクター、業界から学んだ教訓
顧客は日常生活でさまざまな企業・ブランドが提供する製品、サービス、体験を通じ、仕事とプライベート、デジタルとリアル、重要なこととそうでもないことの間を行ったり来たりしながら使いこなしている。こうして行き来しているうちに、顧客の基準は常時影響を受けており、頭の中ではセクター間の境界が曖昧になってきている。
差別化を追求する企業は賢明にも、同じ業界内の競争の先を見据え、自社が蓄えた力が他の業界との競争にどれだけ有効なのかを評価している。顧客の62%が1つの業界での体験が他の業界に対する期待につながると回答している。