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越境者-振り子の思考のイノベーター

文化人類学×デザインの越境1:想像力の飛距離を伸ばす

対談:文化人類学者 竹村真一 氏 × takram 渡邉康太郎 氏 前編

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人類のあり方を考え、企画していく文化人類学

渡邉:
 竹村さんは、「文化人類学者」という肩書をお持ちです。普段のお仕事について聞かせてください。

竹村:
 生きた地球の姿をリアルタイムに感じることができる、「触れる地球」のようなメディアを作っています。別のプロジェクトでは、「日本食は未来食」というコンセプトで農林水産省と一緒に「日本食未来ナビ」を企画運営しています。美味しいという感覚だけではなく、未来の地球人にとって必要な一つのOSとして、日本食を捉え直そうという取り組みです。他にも、お米について考える「コメ展」をディレクションしたりとさまざまですが、その基盤としてあるのは文化や人類の営みから派生したアプリケーションを考えるということです。

 地球や人類という目線でなにごとも考え、研究と同時に企画、提案していくこと。それを多くのステークホルダーと一緒に協働しながら進めていくこと。プロデューサー、メディアデザイナーなどさまざまな呼び方があるかもしれませんが、自分の根幹にあるものとして文化人類学と表現しています。

渡邉:
 従来的な大学の先生や文化人類学者とは、ちょっと違ったあり方のようにも感じます。

竹村:
 もちろん、文化人類学者がみんなこんなことやっているわけではありませんが、海外で「触れる地球」を見せるとすぐに理解してくれます。世界では、文化人類学者は“総合職”という認識なのかもしれません。未開民族を調べるだけじゃなく、人類のあり方を考えて社会に役に立つプロジェクトを立ち上げたり、考案し運営したりする仕事なのです。そのため、「なんで文化人類学者が『触れる地球』みたいなものを作ってるんですか?」とか「文化人類学者なのに食のことをやってるの?」ということに違和感がないのです。世界ではプロジェクト自体の必然性に対して注目が集まるので、“文化人類学者の視点”でなにをやっているかを話すと理解してもらいやすいのです。

 さまざまなプロジェクトの根幹にあるのは、私たちは宇宙を高い解像度で見たはじめての世代として、宇宙のなかの地球、地球の中の人類を考えざるを得ない時代にいるということ。人類が、地球の中でどんな営みしていくか。この視点は、いまを生きる文化人類学者はみんなもたなければいけない。

 さらに、人口73億人がただ存在しているだけではなく、ネットワークでつながっている時代でもあります。人々がつながり、あらゆるものがダイナミックになっていく時代において、人類のあり方が新しいフェーズを迎えようとしています。だから、その新しいフェーズについて考えることは必然なのです。人類としての根本が大きく変わっている時代にいるからこそ、触れる地球を含めた取り組みは、文化人類学者としてまっとうなものだと私は思っています。

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