「青本」の10の原則にみるカスタマーサクセスの始め方
──カスタマーサクセスの必要性はわかってはいても、どう導入していけばいいかわからないと悩む企業も多いと思います。どのように進めていけばいいのでしょうか。
奥村:「青本」の中にも書いてあることなのですが、カスタマーサクセスを行う上で大事な10の原則があります。
- 正しい顧客に販売しよう
- 顧客とベンダーは何もしなければ離れる
- 顧客が期待しているのは大成功だ
- 絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する
- ロイヤルティの構築に、もう個人間の関係はいらない
- 本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ
- タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう
- 顧客の指標を深く理解する
- ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める
- トップダウンかつ全社レベルで取り組む
これらを時間軸で整理すると、以下の図のようになると考えています。
カスタマーサクセスは経営思想やビジネスモデルに深く関わることなので、経営レイヤーが意思決定をし、CCO(チーフカスタマーオフィサー)を置いて、その人が全体的に管理するのが一番良い方法だとは思います。
しかし、カスタマーサクセスはカスタマーセンター、カスタマーサポートのような位置付けに見えやすく、コストセンターだと誤解されていることもあります。その場合、経営レイヤーとしてはそこに大きく投資する判断はしにくいでしょう。そんな状況でミドルマネージャー、現場レイヤーの方々がカスタマーサクセスを導入したいということも多いと思います。
その場合は現場レイヤーでできることから始め、小さな成功体験を作って周囲に必要性を感じさせ、経営レイヤーを説得していくという方法が必要になります。
森田:現場レイヤーから始めるには困難もあります。本来的にカスタマーサクセスは経営思想、ビジスネモデルに関わってくるものであり、既存の組織にそのまま取り込むには難しい考え方でもあるからです。カスタマーサクセスの仕事は部署をまたぐことも多く、既存のビジネスに最適化した組織では調整に時間がかかってしまうケースも見られます。また、組織の中で担当者が孤軍奮闘するような状況も発生しやすいです。
さらにカスタマーサクセスに取り組む場合、デジタルツールに関するものを含めて様々な知識、知見も必要になってきます。経営レイヤーが「カスタマーサクセスに取り組もう」と決めた場合でも、自分たちで全部やり切るのはなかなか難しいため、外部の力も活用しながら小さな成功体験を積み上げて進めていくことが必要なのではないかと感じています。