研究開発より、ベンチャーへの投資
日本の大企業がイノベーションを起こせないと言われて、ずいぶんと時間が経った。しかしどうすればこの状況を打破できるのかという問いには、いまだ答えは出ていない。
企業をイノベーティブにしたいのなら、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を立ち上げる必要があります。
そう語るのは、世界的な家電メーカー、フィリップス・インターナショナルでシニアカウンシルを務めるエリック・バーミューレン氏。彼はオランダ・ティルブルフ大学で、企業の発展やその上でVCが果たす役割といった、企業のライフサイクルをテーマに研究を行う教授でもある。
CVCとは、「企業のベンチャーキャピタル」という名の通り、企業が自らの資金を使ってベンチャー企業に投資をするための組織のこと。楽天やフジテレビ、TBSといった大企業が近年続々とCVCを立ち上げ、日本でも注目されつつある。
そこには一体、どんなメリットがあるのだろうか。「CVC活動により大企業は若返ることができる」と、バーミューレン氏は言う。
アップル、グーグル、サムスンといった世界的にイノベーティブな企業も、実はR&D(研究開発)への投資額はそこまで大きくありません。しかし彼らはCVC活動を非常にアクティブに行っている。言い換えれば、イノベーションを起こす力を持つベンチャーに積極的に投資をしています。その支援によって実現したイノベーションの数々が、彼らの力をここまで大きくしているのです。
ベンチャー企業にとっても、CVCの存在は大きいという。大きな資金が入ってくるだけでなく、大企業がパートナーに付くことでIPO(新規株公開)を行いやすくなり、企業による買収という出口戦略のチャンスも広がるからだ。それはすなわち、ベンチャーのエコシステムを豊かにすることになる。
ベンチャー企業がアイデアを実現するための支援を行い、実現した技術を使うことで企業もイノベーションを起こすことができる。CVCは、大企業とベンチャーが協力して世の中に新しいものを生み出すことを可能にするのである。