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デザイン思考×ビッグデータ

ビッグデータ活用は「数字力」より「言葉力」

第4回:「データの羅列」から「意味のある言葉」へ

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 前回は、調査分析を始める前のゴール設定に向けて、スタート地点の把握(=認識共有)の重要性と3つのコツを説明した。今回は、ビッグデータ活用に重要な仮説構築をどのように進めていけばいいのか。ポイントとなる「定性的に捉える」とはどういうことか、そして、どう進めていけばよいのか、について解説していく。

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「データから発想する」には、どうすればいいのか?

 第1回の「デザイン思考×ビッグデータ」では、A社の事例をもとに、ビッグデータの活用におけるデザイン思考の重要性を紹介した。データから仮説を発想するには、「脳」力を存分に引き出し、「統合思考」を実践しよう、ということである。それでは、具体的にどのようにそれを実践し、新たな発想を生み出していけばいいのか。

 今回は、そのポイントとなる「定性的に捉えていく」ということについて、詳しく説明していきたい。

 なお、「定性的」と言っても、インタビュー調査や行動観察に限った話ではなく、定量データ分析においても、「数字」から「言葉」を紡ぎ出し「定性的に捉える」ことが重要になる。分析によって、いくらクリティカルな「数字」を出したとしても、ヒトは「言葉」にしなければ、意味を理解し考えを深めることはできないからだ。

 さて、その「定性的に捉える」ということについて、B社の事例で具体的に見ていこう。

「数字」から「言葉」を紡ぎ出す-B社の事例

 B社は、業界に先駆けて先進的なサービスを開発し、成長を続けてきたが、売上の伸び悩みが顕著になってきており、何か新しい手を打たなければならない状況であった。まず詳しく現状を把握するため、社内にあるWebアクセスログ、サービス利用ログデータの分析から始めた。

 いくつかの分析結果から、メルマガ経由の売上が圧倒的に多いこと、メルマガ登録にはWeb施策が大きく貢献していることが確認されたため、それを元にWeb施策強化が推進されようとしていた。

 しかし、あらためて過去のWeb施策別の売上実績を分析したところ、各施策別の売上実績にあまり差がないという事実が判明した。施策には必ず善し悪しがあるはずなので、実施結果が一定というのは通常考えにくい。

そこから新たに問題提起されたことは、「本当にWeb施策を強化することがいいのだろうか?」、「この数字の裏側に、何か重要な購買心理が隠れているのではないか?」ということであった。

 だた、この「施策がどのように効果的だったのか、顧客心理にどのように響いたのか」という問いに対する解は、今あるデータでは分析不可能な内容であり、社内にあるビッグデータからは顧客の「顔」が見えない状況であった。

 そこで、フィールドワークを実施することになった。

 実際に顧客を訪問しインタビュー調査することで明らかになった購買心理は、「顧客にとって、Web施策はリマインダーとしての役割にしか過ぎず、それ以前の紙メディアが、“認知普及”にも“購買意欲の醸成”にも強力に効いている」という実態であった。

 この事例が示唆するのは、ビッグデータとフィールドワークのどちらか一方だけではなく、イノベーションのためには、双方をかけあわせていくことが効果的なアプローチになるということだ。

 仮に、B社社内のデータ分析がなければ、購買心理を明らかにするインタビューを短期間で実現することは困難であっただろうし、また逆に、インタビューがなくビッグデータ分析だけであれば、いつまでも顧客の「顔」が見えずズレたWeb強化の施策を繰り返してしまっていただろう。

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この記事の著者

安松 健(ヤスマツ ケン)

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