T型人材の「小さなT」と「大きなT」
創造的な人材といえば、デザイン思考家は「T型」といわれる(注1)。高い専門性と幅広い知識を併せ持つ「T型人材」というのは広く認知されているが、その理解には少し注意しなければならない点がある。
まず1点目は、IDEO社トム・ケリー氏も「(T型人材に関して、)早まった結論を出してはならない」「誰かに関して、一つ目立った話を聞くと、つい思い込みでその人を判断しがち」と指摘するように[1]、「グラフィックデザインができるからデザイナーでクリエイティブ系」「統計に強いからデータサイエンティストで分析家タイプ」などと、ある1つの特徴だけをみて、「この人は〇〇タイプ」と紋切型にアテハメてしまってはならないということだ。一側面だけで判断する限りは「Tの形」は一向にみえてこない。
次に、T字の「形」ばかりに目を向けるのではなく、その「大きさ」を意識する必要がある。
井の中の蛙となっていると、「小さなT」の状況であったとしてもそれを意識することができない。幅広い知識を収集し、身近な環境の中では「T」になっているつもりであっても、市場・社会においては「T型」の前に「I型」にさえなれておらず、むしろ表面的で薄い「-型」のようになっているというようなことは避けなければならない。自分自身がマーケットにおいて価値ある専門性を持つことができているかを省みて、T型の「大きさ」を意識し、より「大きなT」を目指し続けたいものである。
この「T型」というのは、スキル・知識に関するものであるが、しかし、知識・スキルが豊富であれば必ずクリエイティブになれるわけではない。では、それ以外には何が必要になるのであろうか。