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宇田川准教授が語る、「保守思想家としてのドラッカー」──連続的に穏やかに悪化する時代の経営変革とは?

Biz/Zine Day Summer レポート vol.06

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 埼玉大学の宇田川元一准教授は、イノベーションをキーワードに戦略論と組織論が融合する領域の研究者であり、アドバイザーとして企業の変革やイノベーションの推進に携わる支援者でもある。そのような立場から、現代の企業のあり様を「慢性疾患状態」と表現する。本講演では、組織が慢性疾患をセルフケアしながら、自発性を持ってイノベーションを生み出せる状態に至るための考え方と方法が語られた。

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「連続的な穏やかな変化」が企業変革を困難にする理由

 2021年4月刊行の『組織が変わる 行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2on2』(ダイヤモンド社)および前著の『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)において、宇田川氏は対話をベースに変革を進めていくことを提言している。その背景には、今の企業が置かれている社会環境がある。

 世界の情勢がVUCAという言葉で表されることが増え、そのような急激で予測のつかない変化から企業の困難が生じていると考える人は多い。しかし企業が直面する問題を考えるとき、すべての原因がそこにあると考えるべきではないと、宇田川氏は主張する。そして、自身が重視する時代認識として次の3つを挙げた。

  • 穏やかだが確実な変化
  • 悪循環
  • 現状に大きな不満はない

 宇田川氏は、急激な変化が不連続に起きている一方で、穏やかだが確実な変化が連続的に起きてもいるのが今の時代だと指摘する。例えば企業のレベルで言えば既存事業の衰退、社会のレベルでは少子高齢化などは、確実な変化だが、変化のスピードが穏やかであるために危機感を持ちにくい。

 大事なことにも関わらず、忙しさゆえに後回しにされ、後回しにするから非効率が生まれてさらに忙しくなる、という悪循環も生じている。それでも、とりあえず今のところは回っているので大きな不満は出てこない。しかし、穏やかながらも変化は確実に進んでいるので、このままでは将来に希望が持てない、というわけだ。

 不連続的な変化に見舞われたときには痛みを感じるが、その痛みに耐えて乗り越えれば状況は良くなるという希望がある。しかし、連続的に穏やかな変化が続いているとき、将来が今より悪くなることは分かっていても、今はそれほど痛みが感じられないから対応が後回しになってしまうのだ。

 そんなときに、どのような変革の形があり得るか。宇田川氏は2つのアプローチを示した。ひとつはギャップに基づいたアプローチ。「グーグルはこうだが、うちの会社はそうなっていない」、「世の中はこうなっているのに、自社は違う」といったギャップを埋めるべく変革を進めようとするやり方だ。

 宇田川氏が推すのはもうひとつのアプローチで、「自社としてやるべき必然性があることをやっていく」というものだ。

「自分たちが一体どういうことを目指していくのか、それをよく見定めた変革というものが大事ではないでしょうか。『新しいことをやることが“革新”で、それをやらないのが“保守”』という対立構造に陥らず、自社ならば何をするのが望ましいのかという観点から、一歩ずつ着実に変革をしていくことが必要になっているのではないかと思うのです」

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