データ取得が厳しくなる中で、顧客の立場に立ったマーケティングへ回帰する
近年、「Cookieが使えなくなった!」などと騒がれ、従来のデジタルマーケティングへの影響が大きいとされる「3rdパーティCookie問題」。そもそもCookieには、ドメイン単位でIDが保持される1stパーティCookie、そして、異なるドメインを跨いで保持できる3rdパーティCookieがあり、それぞれ全く性格が異なる。3rdパーティCookieが全く使えなくなる時代のことを想定し「ポストCookie時代」と呼ばれている。
設立後1年間でテクノロジーとマーケティングの面からワンストップで、様々な業種・業態の企業に対してDXを支援してきた、インキュデータ株式会社の田村氏は、「すでにSafariやChromeなどでは3rdパーティCookieの規制が進んでおり、法制的にもEUのGDPRや日本での個人情報保護法の改正、米国でのCCPA(カリフォルニア州プライバシー法)の成立など、世界全体でデータプライバシーに対する保護規制が厳しくなっている。また、IoTやアプリなど顧客タッチポイントの増加によって、Cookieに頼らないマーケティングが進みつつある」と現状を解説する。つまり、データ活用のために“プライバシー”がより重要な時代になり、今後さらに意識していく必要があるというわけだ。
そして、ポストCookieの世界がビジネスへ与える影響について、各視点から次のように紹介した。
広告主への影響
適切なターゲットに対する広告が配信できなくなるため、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)が悪化する。これまでの手法が使えなくなり、ドメイン跨ぎのアトリビューション計測[1]ができなくなるため、ラストクリック中心のCPAになる。さらにプライベートDMP[2]でためている1stパーティCookieや広告配信用の3rdパーティCookieと連携できなくなる。
メディアへの影響
Googleの発表では「3rdパーティCookieが使えなくなることで、メディアの広告収益が52%減少する」と言われている。また、CVR(Conversion Rate:顧客転換率)の高いユーザ属性(リタゲユーザなど)に対しては入札単価を高めたり、CVユーザのデータを除外したりすることで、ターゲットを絞って広告配信が出来ていたが、今後はそれができなくなりCPM(Cost Per Mille)[3]が悪化する。
消費者への影響
「CVRが高い広告」や「目に付きやすい広告」などCPMが高い広告の設定が増え、不快な広告や誇張表現を含む広告がより表示されやすくなる。また広告での収入が低下することで、有料課金のコンテンツを増やす会社が多くなる可能性があり、今までの価格設定で商品を提供することが困難になる可能性がある。
田村氏は、「あくまでこれらは予想であり、懸念であるが、3rdパーティCookieが使えなくなることでこれらが実現すると、消費者にとっても必ずしも良いことばかりとはならない。それを踏まえた上で施策を行っていくことが求められる」と語り、「今後、プライバシーの時代に、企業がマーケティングやビジネスを展開する上で、消費者目線に立つことが最も重要」と強調した。
[1]アトリビューション(分析):直接的にコンバージョンにつながった接点だけではなく、複数の接点で貢献度を割当てる分析方法
[2]プライベートDMP:自社で保有する会員情報や購買履歴・アクセスログといったデータを一元管理し、マーケティング施策に活用するための情報基盤
[3]CPM:インターネット広告が1,000回表示されたときに必要となる広告費