連載・コラム 民主化する「プロトタイピング」の新潮流

新規事業開発に「プロトタイピング」が必須である3つの理由──民主化するプロトタイピングの新潮流とは

第1回

 事業開発担当者の中には、「プロトタイピングはデザイナーやエンジニアなど、ものづくりが得意な人たちが行うもの」と捉える方が多いようです。そのような場合、アイデアやコンセプトの事業化を進めていく段階でプロトタイピングが実施されることがない、もしくは製作だけを外部パートナーに外注するケースがよくあります。ただ、現在はデザイナーやエンジニア以外の人でも簡単にプロトタイピングを行える環境ができており、自ら手を動かしてプロトタイピングをするべきです。本連載ではアカデミックとビジネスの知識・経験を交えながら、プロトタイピングを行う意義や具体的な方法まで徹底的に解説します。本稿では、成功する新規事業開発にプロトタイピングが必須である理由についてご紹介します。

[公開日]

[著] 三冨 敬太

[タグ] プロトタイピング 事業開発 ノーコード開発 プロトタイピング・キャンバス

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プロトタイピングは新規事業開発担当者にとって必須のスキルである

 もっとも影響力のあるイノベーションの思想家の一人であり、『Winning at New Products: Creating Value Through Innovation』(邦題:『ステージゲート法――製造業のためのイノベーション・マネジメント』)の著者であるRobert・G・Cooper博士は、大企業の新製品開発において、最大で50%の資源が無駄になっていると、著書で指摘しています。さらに、ミネソタ大学の助教授であるCarlye Lauff博士は、このような資源の浪費の多くは、非効率なプロトタイピングが起因していると主張[1]しています。

 アカデミックな立場からの考察だけではなく、ビジネスの現場においてもプロトタイピングが重要なことが明らかになっています。それは、新規事業開発に用いられる方法論などから一目瞭然です。例えばリーンスタートアップでは、基本的に「構築―計測―学習」のフィードバックループを中心にモデル化されたもので、重要な役割を担うのが、実用最小限の製品(MVP:Minimum Viable Product)です。MVPは最小限の労力と時間でプロトタイプをつくり、見込み客からの反応を得てフィードバックループを回すエンジンとなるものですが、プロトタイプを作成し検証するという点から、プロトタイピングの一部といえます。また、新規事業に活用できる方法論としてのデザイン思考でもプロトタイピングは重視されており、例えば、アメリカのスタンフォード大学の機関であるd.schoolがまとめたデザイン思考の5つのプロセスには、プロトタイプとテストが組み込まれています。

 このように重視されているプロトタイピングですが、十分に理解・活用がされてはおりません。その理由としては、事業開発担当者がプロトタイピングを以下のように捉えていることが主な要因になっています。

「プロトタイピングは基本的にものづくりの範疇であり、デザイナーやエンジニアのように“ものをつくれる人たち”が得意なもので、ものづくりが専門ではない自分たちは担当ではない。必要があれば社内の誰かに頼むか、外注する」

 筆者は多くの企業の新規事業に伴走する中で、新規事業に関わる人々にとってプロトタイピングは必須のスキルになってきており、ものづくりの得意・不得意など関係なく誰もが行うべきものだと考えるようになりました。社会環境の変化、プロトタイピング研究の進展、テクノロジーの進化が主な理由となります。以降、その詳細を見ていきましょう。


[1]Carlye Lauff, Daria Kotys-Schwartz, Mark Rentschler「What is a Prototype? What are the Roles of Prototypes in Companies?」(Journal of Mechanical Design 140.6, 2018.)

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