注目度の高まるノーコードツールを新規事業のどのタイミングで使うべきか
プログラミングを学ばなくても開発ができる「ノーコードツール」。ノーコードツールを用いることで、エンジニアでなくても最速につくりたいものをつくれるようになりました。新規事業開発において注目を集めるノーコードツールは、近年さまざまな選択肢が登場し、書籍も多数出版されています。例えば2021年6月に出版された書籍、『ノーコードシフト プログラミングを使わない開発へ』では、ノーコードツールのメリットとデメリットを以下のように整理しています。
以上のように、若干のデメリットはあるものの、ノーコードツールを用いることで今まではエンジニアがいないと開発できなかった事業アイデアが、社内人材を活用しながら安く早く開発できるようになるのです。
そして、ノーコードツールはさまざまな目的に対応できる多様なものが存在しています。以下は「NoCode Japan(ノーコードジャパン)」がまとめているノーコードツールのカオスマップです。
このように、ECサイトがつくれるもの、ウェブサイトがつくれるもの、ネイティブスマホアプリがつくれるものと、さまざまなノーコードツールが存在しています。つくりたいものが誰でもすぐにつくれる環境が整ってきており、まさにプロトタイピングの民主化と呼べるでしょう。
ここで突然ですが、あなたが1つのアイデアを思いついたとします。
それは、「おうちパーフェクトディナー」というアイデアで、自分の好みにあわせた食器と食材がお家に配達されて、それを用いて料理をして、出来上がった料理を楽しむ。そして、料理が終わったら、食器は軽く流して、玄関に置いておくだけで回収してくれる、というものです。
このアイデアを形にするため、ノーコードツールのカオスマップを参照し、「今回はウェブでプロトタイプをつくるのが良さそうだから、早速Glideを使ってつくってみよう!」と思われるかもしれません。しかし実は、それは避けた方が良いのです。
カーネギーメロン大学で客員教授なども務めるMarc Rettig氏は、プロジェクトの初期段階ではできるだけ簡単なプロトタイプをつくることを提言しています。具体的には、ソフトウェアでつくることは避け、ペーパープロトタイピングをするなどして、できるだけ早くつくるべきであると指摘[1]します。ノーコードツールもソフトウェアで、操作方法を学ぶなどの学習コストが発生します。その観点からペーパープロトタイピングと比較すると、けっして最速ではないのです。
ノーコードツールは非常に有用で、プロトタイピングの民主化をもたらしました。ただ、使い方を間違えると新規事業構築の効率を悪化させることにつながります。
プロトタイピングで重要なのは、「早くつくる」「安くつくる」「並行してつくる」ことです。そのためには、段階を追って「プロトタイプの忠実度」を高めていく必要があり、それを踏まえてノーコードツールの使うタイミングを検討していくのです。
[1]Marc Rettig「Prototyping for tiny fingers.」(Communications of the ACM Volume 37 Issue 4 April 1994 pp 21–27)