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大企業によるDXの実践知

DX推進は根本の問題から解決する「炊き込みご飯モデル」で──グロービス柳田氏に聞くDX人材の育成

第4回 ゲスト:グロービス 柳田佳孝氏

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 デジタルトランスフォーメーション(DX)実務の第一線を担う担当者から、ベストプラクティスや想いを引き出し共有知化するために、「企業内DX推進コミュニティ」の参加各企業の取り組みを掘り下げていく本連載。今回は、グロービス経営大学院でディレクターとしてDX推進に携わりつつ、同時に教員としてテクノロジー系の科目を担当している柳田佳孝氏に、自社でのDXの取り組みや、日本企業のDX推進に見られる問題についてお聞きしました。聞き手は住友商事株式会社・新事業投資部の部長代理、蓮村俊彰氏です。 ※取材はマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを保って行っています。

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コロナ禍以前からオンラインクラスの体験価値向上を追求してきた理由

蓮村俊彰氏(以下、敬称略):グロービス経営大学院でのDXの取り組みについて教えてください。

柳田佳孝氏(以下、敬称略):様々な取り組みを行っていますが、一例としてオンラインクラスの取り組みについてお話させてください。いまでこそコロナの影響もあってオンラインクラスを設ける学校は増えていますが、グロービス経営大学院では通学型のクラスに加えて、7年前からオンライン型のクラスを提供しています。

 グロービス経営大学院は、学生自身が自らの頭で考え意見を出し、議論を繰り返す営みを通じて、深く考え抜き、実務で使える実践力を培うことを大切にしています。そのため、クラスは教員が一方的にレクチャーを行うのではなく、学生同士のグループワークやペアワーク、教員からクラス全体に問いかけながらディスカッションをするなど、インタラクティブに進んでいきます。こういった通学クラスの学びと同等またはそれ以上のものをオンラインクラスでも実現できるよう、何年もかけてオンラインクラスの体験価値向上を追求し、ブラッシュアップしてきました。

 オンラインクラスの立ち上げは7年前にさかのぼります。これは、近年のDXブームとは無関係に、遠方の方や海外転勤になった方でもクラスが受けられるようにという、顧客ニーズに則った取り組みでした。当然ながら、オンラインクラスの立ち上げは簡単ではありませんでした。機材は何が適切なのかといった基本的なことから、「教室の中でホワイトボードを使いながら行う学生同士のグループワーク」のような、通学クラスならではの体験価値と同等のものをオンラインクラスでどうすれば実現できるのかといった話まで、様々な問題を解決しなければなりませんでした。このような問題を一つひとつ解決し、オンラインならではのクラス設計やティーチングノウハウを蓄積しながら改善を進めてきた結果、今ではオンラインクラスの満足度は通学クラスと同等の5点満点中の4.5ポイント以上と高い水準にいたっています。

株式会社グロービス ディレクター 柳田佳孝氏
グロービス ディレクター 柳田佳孝氏

蓮村:なるほど。オンラインクラスの立ち上げ以外にはどのようなDXの取り組みを行ってきたのでしょうか?

柳田:たとえば学生向けのマイページを全面的に刷新し、その中に学生同士が交流できるクローズドSNSを新たに設けました。これにより、在校生の横のつながりだけではなく、卒業生との縦のつながり作りをオンライン上でも促進することができました。また、そのような仕組みを実現するために基幹システムをはじめとしたシステムをCRM中心となるよう全面的に再構築するといった取り組みも行いました。

 また、システムの再構築にあわせてオペレーションの再構築や、複雑な制度の撤廃・統廃合、学生にとってのさらなる利便性向上に向けた制度の充実など、制度面でも顧客ニーズにあわせて必要な対応を重ねてきました。

 最近では、社内のコミュニケーション改革を行ったことも大きいですね。たとえば、社内コミュニケーションツールがメール・メーリングリストに加えて、Google HangoutやSlackといった複数のチャットツールにまたがる状態になっていたため、これらをすべてSlackに一本化しました。それにあわせて、どのコミュニケーションや意思決定をどのチャンネルで行うのかといった話から、メンションのルールに至るまでルール整備までも行いました。このような取り組みにより、社内のコミュニケーション効率が大幅に向上し、社員一人あたりの社内コミュニケーションにかかる時間が1日あたり1時間以上削減されるなど、効率化が進みました。効率化によって空いたスタッフの時間は、社内コミュニケーションではなく顧客コミュニケーションや各種企画立案・実行など、より顧客体験価値を向上させる方向に時間を使えるようになってきたと感じています。

蓮村:Slack導入の話もおもしろいですね。コミュニケーションツールも、単純にツールを導入してルールを展開するだけでは大きな効果が出ないと思うのですが、Slackの使い方やルールを社員周知するために、どのような工夫をしてきたのでしょうか。

柳田:それはもう、あの手この手を講じました。ルールの明文化や展開はもちろんのこと、勉強会も実施しましたし、Slackの運用ルール浸透のためにアンバサダーを全部署に立てて効率化を推進するといったこともしています。

 もちろん、導入当初はSlack自体に否定的な方もいました。ただ、しっかりと設計されたコミュニケーションルールに則ってSlackを使ってもらうと、むしろそのルールに沿ってコミュニケーションを行うほうがこれまでよりも効率がよいし気持ちがよく、ルールに沿っていない使い方を見ると非効率だと感じる状態に多くのスタッフが早々に変わっていきました。

 ルールの周知・徹底も重要ですが、どのようなコミュニケーションを現場から経営層まで行ってもらうことが学校全体としてよいのかをしっかりと考えて、それをツール設定や運用ルールに落としていく設計こそが肝だと思います。

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この記事の著者

友清 哲(トモキヨ サトシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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