有価証券報告書にて経営方針や経営戦略などを説明する項目「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において記載があったワードを分析したところ、2021年はCOVID-19関連ワードに加えて、ESGやSDGsなどの社会課題関連ワードや、DXなどデジタルトランスフォーメーション関連ワードが急増(図表1)。具体的にはDXが前年比379社増、SDGsが前年比257社増、ESGが前年比159社増となり、デジタル技術を活用してビジネスを変革しながら、中長期的な社会価値の創出を目指す姿勢が見られたという。また、カーボンニュートラル(前年比166社増)、脱炭素社会(前年比151社増)への言及も増えており、企業が気候変動を経営テーマとして受け止め始めていることが見て取れる結果に。
DXに言及する企業が増加、特に東証一部上場企業においては顕著な結果に
急上昇ワードの2位であるDX関連ワードについては、特に電力(64%, 前年比9ポイント増)、情報通信・サービスその他(50%, 前年比11ポイント増)、電機・精密(44%, 前年比12ポイント増)等の業種における記載企業の割合が高くなっているという。会社規模とDXの記載率の傾向を見ると、企業数の少ない一部の業種を除いて、東証一部に属している企業(平均43%)の方が、東証一部以外(二部・その他市場)に属している企業(平均24%)よりも高くなった。DXの記載率を経年比較すると全業種において増加傾向にあることが見て取れる(図表2)。具体的な記載例としては、「新型コロナウイルス感染症拡大を契機として顧客との接点の変化を見込み、デジタルツールを活用した非接触の販売プロセスの確立に取り組む」との記載や、「『デジタルとリアルのベストミックス』 を追求することで安心と利便性を提供する方針」といった記載が見られた。
SDGs、ESG、社会的価値の記載率は最多が銀行、次いで電力・ガス、エネルギー資源。全業種で増加傾向
ESG、SDGs、社会的価値の関連ワードの記載率は銀行、電力・ガス、エネルギー資源を筆頭に17業種中8業種が50%を上回り、比較的、高い割合で記載される傾向が見られた。また、市場区分別の集計では、ほぼ全ての業種で東証一部企業における記載率が高い傾向にあったという。そして、記載率を経年比較すると全業種で記載する企業の割合が増加傾向にあり、業種を超えた経営テーマであることが示された。特に、鉄鋼・非鉄業においては記載率が2019年に13%、2020年に22%であったが、2021年には53%まで急増している(図表3)。
今後の注目キーワード、パーパスの記載が増えつつある
SDGs、ESG、社会的価値が経営テーマとして示される中、パーパス(存在意義)のワードの記載をしている企業も2020年の98社から2021年の159社まで増加。パーパスを経営方針や経営戦略と紐づけて具現化する動きは今後も広がっていくことが期待されるという。
しかしながら、パーパスは、ステークホルダーや社会全体といった第三者的視点から自社の果たすべき役割を俯瞰して定義付けていくものでもあるにもかかわらず、単に「存在意義のある会社」と説明したり、パーパスと経営理念を一致させたりする記載があり、パーパスの位置づけが道半ばなケースがあったという。また、パーパスの内容については、金融機関や幅広い商品・サービスを扱っている企業においては「新たな価値の創出」といった抽象度が高い表現が多くみられる一方で、注力する商品や領域を絞っている企業は「食」「健康」「快適な住まい」などのように、具体的な表現を盛り込む例もあったとしている。
パーパスと同様に今後注目するキーワードとしてWell-being が挙げられ、2020年は7社だったが、2021年は17社に増加。例えば、社会に提供する価値として「健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現 」と表明し、その中で「Well-beingの提供」を掲げている企業や、「健康的で幸福な『美しい生活(Well-being)』を提案・創造」と記載した企業もあったという。