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「カーボンニュートラル」とは何か

コンセプトとしてのカーボンニュートラルを企業経営に実装する──「3つの回路」によるトライアングルとは

ボストン コンサルティング グループ(BCG) マネージング・ディレクター&パートナー 丹羽 恵久氏

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 2020年10月の菅義偉前首相による「カーボンニュートラル宣言」以降、日本でもカーボンニュートラルに関する話題が増えている。しかし、カーボンニュートラルは様々なステークホルダーが絡んだ複雑な話である一方で、日々流れてくる情報は断片的。企業が自社の動きを検討するには、まずはカーボンニュートラルの全体像を俯瞰して理解する必要がある。カーボンニュートラルに関して企業向けの支援・コンサルティングはもちろん、国際的なルールメイキングに参加する立場にもある、ボストン コンサルティング グループの丹羽恵久(にわ・よしひさ)氏に前後編で概説してもらった。

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気温上昇が止まらない。カーボンニュートラルが求められる背景

──まずは、気候変動がなぜ企業経営に大きな影響を与えるかについてお聞きします。

丹羽 恵久氏(ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&パートナー、以下敬称略):気温の上昇は、例えば干ばつや河川の氾濫、海面上昇、氷河の融解など、自然環境や人類の生活に多方面で影響を与えることが危惧されます。そして、自然環境の変化は各国の経済活動にも大きな影響を及ぼすと考えられています。

 気候変動を評価する政府間機構として、「気候変動政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)」があります。長期的な気温上昇の傾向を把握するために、まずは2014年に発表された「第5次評価報告書(日本語訳)[1]」を参照することをお勧めします。ここでは、現在のペースで温暖化が進むと、2100年の地球の平均気温は産業革命前に比べて、気候変動対策を行わないシナリオ(RCP8.5)としては平均で3.7℃(2.6~4.8℃)上昇するとしています。

IPCC 第5次評価報告書の概要
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出典:環境省「IPCC 第5次評価報告書の概要 -WG1(自然科学的根拠)-」(2014年12月版)

 こうしたリスクを人類共通の危機と捉え、各国政府間で2015年に採択されたのがパリ協定です。世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ちつつ、1.5℃で抑える努力をすることを掲げています。そのために世界全体でのカーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)を今世紀後半に実現することを目標としました。

 その後、IPCCが2018年に発表した「Global Warming of 1.5°C」(「IPCC『1.5℃特別報告書』の概要」[2])で状況がより深刻であることが公表され、特に産業革命以降にすでに1℃の気温上昇があり、現在の気温上昇ペースでは、地球温暖化は2030~2050年に1.5℃に達するという見解が示されました。事実上、カーボンニュートラル実現のターゲットは2050年にまで前倒しされ、企業によっては2030年までに自社のカーボンニュートラル達成を宣言する企業もあります。

 IPCCは2021年8月に、第6次評価報告書の作成に向けた作業部会の報告書「AR6 Climate Change 2021:The Physical Science Basis」を発表しており、気象庁による暫定訳も公開[3]しています。

 今回の報告書のポイントは、パリ協定で定められた「世界の平均気温の上昇を2度より十分に低く保ち、1.5℃以下に抑える」という目標に対して、産業革命以前と比べて2011~2020年平均で1.09℃、すでに上昇していることがわかったということでした。気温上昇のペースがさらに速まっています。

AR6 Climate Change 2021:The Physical Science Basis
画像クリックで拡大表示
出典:IPCC「AR6 Climate Change 2021:The Physical Science Basis」(2021年8月9日)

──この問題にいま取り組まなければ、経済活動どころではなくなる、と。

丹羽:はい、そうですね。しかし、カーボンニュートラルには地球環境の問題とは別にもうひとつ、成長戦略としての側面もあります。カーボンニュートラルの旗が掲げられ、規制や財政、金融などの様々な側面で機運が高まれば、膨大な投資が行われることになります。BCGでは、2020年から2050年までに世界全体で累計約122兆ドル(約1.3京円)の関連投融資が必要になると試算[4]しています。様々な関係者が長期にわたってコミットし続けなければならず、しかも国や地域を問わない地球規模のトピックですから、カーボンニュートラルが生み出す巨大市場は、排出削減のためにかかる経済活動へのブレーキを上回り、GDPにプラスの影響を及ぼすとも考えられています。


[1]環境省「IPCC 第5次評価報告書の概要 -WG1(自然科学的根拠)-」(2014年12月版)

[2]環境省「IPCC『1.5℃特別報告書』の概要」(2019年7月版)

[3]経済産業省、文部科学省、気象庁、環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠) 政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)」(2021年8月9日)

[4]The Global Financial Markets Association(GFMA)とボストンコンサルティング グループの共同レポート「Climate Finance Markets and the Real Economy」(2020年12月)

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