社交のデザインによるコミュニティや組織の価値のアップデート
山極:社交というのは非常におもしろい。ホスト、つまり社交のデザイナーがいて、一つの「物語」を提示します。その物語に沿って参加者は服装を整え、マナーをわきまえて参加し、緊張感のもとに生み出されるリズムと流れに沿って、定められた時間において物語を共に作り上げていく。だからこそ、社交に参加した人は、共に何かを作っている感覚を持つことができます。それが社交の持つ根源的な意味なんです。
ここで重要なことは社交には経済的な目的はなく、遊びと一緒だということ。霊長学の研究から出てきた結論なのですが、遊びは本来、経済的な目的を持たず、外から見れば時間の浪費にしか見えません。でも、遊びの中では同じ時間を共有し、互いに身体を触れ合わせて、心や身体を感じ合うことができます。興奮を高めるためにゲームのルールの型が立ち上がってきて、ハンディキャップをつけて、力の大きい者や身体の大きい者が、力の弱い者、身体の小さい者に合わせます。すると、そこでは力の弱い者、身体の小さい者がイニシアチブを握ることになり、対等な関係が生まれます。役割の交代がそこで演じられるんです。その結果、お互いの理解が深まっていきます。