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ビジネスアジリティとデザイン

大企業でのDX推進に必要なビジネスアジリティ──「本島戦略」におけるプロダクトオーナーの役割とは?

第6回(第1部・最終回)

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 本連載ではこれまで、「ビジネスアジリティとデザイン」というテーマで、ビジネスアジリティとは何か? そしてその世界で求められるプロダクト開発とは何かについて、各分野の専門家にバトンを渡しながらお伝えしてきました。  最終回である今回は、ここ数年、日本企業、特に大企業の間で起こってきたデジタルを取り巻く環境変化、そして今まさに起こりつつある新しい潮流について触れながら、あらためて「ビジネスアジリティ」の重要性に言及します。その上で、この新しい潮流の主役となる「既存ビジネスの実行者たち」=「プロダクトオーナー」が、この変化にどう立ち向かっていくべきかをお伝えし、連載を終えたいと思います。

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「出島戦略」のその先に何を描くのか

 Biz/Zineの読者であれば「出島戦略」はよく聞くキーワードの一つではないかと思います。以前からも使われている言葉ではありますが、経団連が2018年以降頻繁に使うようになったことをきっかけに広まったと言われています。江戸時代、海外との唯一の窓口となった長崎の「出島」になぞらえた、大企業向けの戦略を指します(デジタルマーケティングの略称としての「デジマ」ではありません)。

 では、経団連では「出島戦略」についてなんと述べているのでしょうか?

「既存のプロセスなどの非イノベーション構造を抱える大企業の本体での新規事業は困難」

「本体から独立し、離れた『出島』形式の異質な組織で自由にイノベーションを起こすのが有効」

出典:吉村 隆「オープンイノベーションの推進に向けて」(2019年4月5日)

 出島組織を使ってベンチャー投資やオープンイノベーション、産学連携や単独での新規事業開発などを行っていきます。多産多死からゼロイチを生み出す、「探索(新規ビジネス)」の急先鋒を担う組織です。実行に必要なマインドが「活用(既存ビジネス)」サイドと全く異なるため、ヒト・モノ・カネも評価制度も分けることで活性化を図ります。

 出島組織を用いたその戦略は今も各社実施していますが、ここ1~2年、出島戦略の一歩先を見据えた動きが活発になってきました。筆者はその新しい動きを「本島戦略」と呼んでいます。具体的には、まさにその名の通り、本島、すなわち大企業本体で「探索」的な取り組みを行える仕組みを用意したり、デジタル部門を「事業本部」に昇格させたり、本体の中心事業の一つとしてデジタルサービスを据えたりする、などの動きです。

 この本島戦略を実現するためには、本島そのものが変化に対して適応的でなければならないため、本連載のテーマであるビジネスアジリティの獲得が必然的に求められるようになってきています。

 次ページでは、本島戦略が生まれてきた背景、その難しさ、そしてその具体的な事例について触れたいと思います。

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この記事の著者

根岸 慶(ネギシ ケイ)

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