NTTデータは3月31日、世界のコーポレートバンキングに関する動向をまとめた調査レポート「コーポレートバンキング展望2022」を公開した。海外グループ会社とともに世界12ヵ国の金融機関と企業を対象として調査を実施し、その結果を取りまとめている。
調査レポートでは、主に以下4点を明らかにしている。
- 企業は、金融機関との関係において、従来の人同士のコミュニケーションではなく、APIなどを介したシステムでのやり取りをますます好んでいる
- 金融機関によるテクノロジ投資について、ポータルの合理化など世界的に広がりをみせている分野がある一方で、どの新技術に投資するかについては地域差がある
- 金融機関がどの分野に投資するべきかという点について、金融機関と企業の間で期待度に最も大きなギャップがある分野は、サステナビリティ関連である
- 企業はともに、金融機関が各産業に関して持つ専門性に期待しているが、期待する内容は産業ごとに大きく異なる
企業の金融機関とのやり取りの変化
企業は、金融機関との関係において、従来の人同士のコミュニケーションではなく、APIなどを介したシステムでのやり取りを好む。商品・サービス内容を企業自らがオンラインで選べるセルフサービスへの期待が高まっているほか、金融機関のバンキングサービスの環境と自社システムを連動させたいという要望も増えつつある。企業は、取引のスピード・柔軟性の向上に加え、オペレーションの合理化、AIやRPA導入によるメリットの享受を期待している。
金融機関によるテクノロジ投資の重点分野
いま世界の金融機関が取り組んでいることは、主に、
- ポータルの合理化や統合
- 商品提供に際しての顧客システムとの連動
- 新技術への投資による既存顧客へのサービスの改善
- 財務面での迅速な意思決定へのデータの活用
の4点。そのうち、「1.ポータルの合理化・統合」については、金融機関の85%が取り組み中と答えている。「3.新技術への投資による既存顧客へのサービスの改善」については、オープンバンキング・AI・RPAが、金融機関が投資している分野のトップ3となった。
もっとも、こうした優先度については地域別に大きな違いがある。たとえばAPACの金融機関は、全般に投資意欲が強いなか、他地域に比べAIやRPAへの投資に重きを置いている。
金融機関の投資と企業ニーズのミスマッチ
金融機関による投資の優先度と企業の期待の間には、ギャップがある。最もギャップが大きいのは、サステナビリティ関連の商品・サービスの提供について。企業は金融機関がいま投資している以上に、サステナビリティ関連に多く投資することを求めている。背景には、サステナビリティの確保やESGの導入について世界中で規制が強化されていることや、世間からのプレッシャーが高まっていることがある。企業はまた、オムニチャネル拡大に向けても、金融機関さらなる投資を行うことを求めている。
産業ごとに異なるバンキングテクノロジに対する企業ニーズ
企業が金融機関に求めるバンキングサービスは、各産業部門で違いがある。今回の調査では、
- ビジネスサービス・プロフェッショナルサービス
- 建設・不動産
- エネルギー・石油/ガス・ユーティリティ
- IT・テクノロジ・通信
- 製造業
- 生命科学・ヘルスケア
- メディア・レジャー・エンターテインメント
- 流通・運輸
- 小売
の9つの産業部門ごとに満たされていない企業ニーズを調べ、「財務・キャッシュマネジメント」と「サプライチェーン金融」の二つの観点で、各産業と全産業平均を比較している。