テクノロジーによる「つくる力」の民主化がもたらすもの
みなさんも既に身近なこととして感じているのではないかと思いますが、生成AIやノーコードツール、3Dプリンターなど、近年登場している様々なテクノロジーは、これまで専門的なスキルや経験が求められていた領域にも、より多くの人がアクセスすることを可能にし、モノづくりの可能性を大きく広げています。
たとえば、生成AIを使えば高度なビジュアルやテキストを短時間で生み出せるため、事業開発の初期段階でコンセプトスケッチやプロトタイプのラフ案をすぐに具現化し、検証できます。ノーコードツールがあれば、エンジニアリングの知識がなくてもアプリやWebサービスのプロトタイプを自分で組み立てられます。3Dプリンターを使えば、複雑な形のプロダクトを一晩で造形し、翌日には手に取って確認することさえ可能です。
こうした技術革新によって、「まずはつくってみよう」という実験的なアプローチが、より気軽に、低リスクに選択できるようになってきました。結果として、アイデアを形にするハードルが下がり、新規事業における仮説検証のスピードや柔軟性の向上にもつながっています。
注目すべきは、こうした技術が「つくる力」そのものを民主化し、以前は特定の専門職だけが担っていたアウトプットも、チームのあらゆるメンバーが形にできるようになってきたことです。では、みんなが「つくる力」を持てるようになった今、デザイナーの役割は必要なくなるのでしょうか? テクノロジーの進化は、デザイナーの仕事を奪う脅威となるのでしょうか?
私はそうではないと思っています。むしろ、デザイナーにとって重要なのは、これらの技術を「脅威」と見るのではなく、「拡張」として捉える視点です。創造性や判断力といった人間ならではの力を、より高め、支えてくれる存在として、ともに働けるか。そこに、これからの「つくる力」の新しいあり方が見えてくるのではないでしょうか。
