2025年12月25日、ベイン・アンド・カンパニーが発表した最新レポートによると、2025年の世界M&A(合併・買収)市場は年間取引総額が4.8兆ドルに達し、過去2番目の高水準を記録した。前年比では36%の増加となった。この回復は、主に50億ドル超のメガディールの増加や、AI関連取引を中心としたテクノロジー分野の活況が牽引要因となっている。
今年のM&A市場では、普段は買収の頻度が低い企業による大型投資が目立ち、取引総額の拡大に寄与した。取引件数自体は前年比5%増にとどまったが、ひとつあたりの規模が拡大していることが特徴である。50億ドル超の案件は、戦略的ディール価値成長の75%を占め、約60%は買収頻度の低い企業によるものだった。また、総取引額の約40%は、買収額が買収企業の時価総額の50%を超える変革型ディールで構成された。
分野別では、AI技術を取り入れた取引が急増し、テクノロジー分野のM&A金額は前年比76%増の4,780億ドルとなった。また、先端製造業分野も38%増の7,170億ドルに達している。業界・地域を問わず取引金額は総じて二桁成長となり、世界的なM&A回復の広がりを示している。
地域ごとに見ると、米国市場は戦略的ディール金額の半分を占め、世界の成長を牽引した。中国市場は案件数で首位を維持し、取引金額も世界第2位となった。日本市場も世界第3位へ躍進し、取引額は前年比で倍増、件数も2桁増となった。欧州・中東・アフリカ地域ではメガディールが進展する一方で、全体の案件数は7%減少した。
投資の主体別では、戦略的取引で38%増、金融投資家で31%増、ベンチャーキャピタルで28%増となり、幅広いプレーヤーで取引活動が活発化した。従来、M&Aに逆風となっていた規制や資本コストも緩和傾向にあり、売り手・買い手間のバリュエーションギャップも縮小していることが追い風となった。
また、M&Aの現場ではAI活用が進展し、戦略的買収企業の75%がAIの影響をディール評価時に考慮、担当者のAI利用率は45%に倍増した。特にディールのソーシングや統合プロセスでの利用が進んでいる。
取引戦略は「スケール型」から新市場・顧客開拓を狙う「スコープ型」へ大きくシフトし、10億ドル以上のディールの60%がスコープ型となった。
2025年はクロスボーダーM&Aに大きな変化はなかったが、保護主義的な潮流や資本配分競争の激化により、今後の投資判断には厳しいROIが求められる環境である。
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