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地政学戦略の実装

地政学リスクを予測し商機に変える──西尾素己氏が語る、日本企業が取り組むべき「地政学戦略」の実装とは

【前編】日本企業が見直すべき地政学との向き合い方・精神的土壌

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地政学的視点を企業活動に実装する

──パンデミックや紛争など、国際情勢を揺るがすような出来事が立て続けに起こる“不確実性の時代”。西尾さんは、企業が今後もビジネスを続けていくためには、経営・事業に「地政学戦略」を実装すべきだとおっしゃっていますよね。そもそも、ビジネスにおける地政学戦略とはどういうものなのでしょうか。

西尾 素己氏(以下、敬称略):国際政治経済や政策分析など、いわゆる地政学的視点をビジネスの場に持ち込み、経営・事業戦略に活用していくことです。

 これまで地政学の領域は、研究機関やシンクタンク、安全保障の専門家などの間で、あくまで政治的・軍事的な話として議論されることが多かったですが、これからは企業活動の場にも、こうした視点を取り入れていかなければなりません。

 その上で、ビジネスにおける地政学戦略は、大きく2つの側面を考える必要があります。「守りの地政学戦略」と「攻めの地政学戦略」です。

リスクを予兆把握し損失を防ぐ「守りの地政学戦略」

──守りと攻めの地政学戦略……それぞれ、どういった概念になっているのでしょうか。

西尾:まず、自社に起こり得る地政学リスクを予測・分析し、経営や事業を保護するのが、守りの地政学戦略です。

 たとえば昨今の国際情勢を見てみると、紛争の勃発や災害の発生により、企業は特定の地域での生産活動を行えなくなったり、大きな損失を被ったりする可能性があります。また、工場などの生産拠点をグローバルに展開したり、発展途上国で生産された素材を製品に使用したりする場合、そこで働く人々の労働環境や人権がしっかりと守られていなければ、関わる企業が問題の加担者になってしまうかもしれません。

──環境や人権の問題は、投資家や消費者など企業を評価する立場のステークホルダーたちも、特に目を光らせていますよね。

西尾:そうですね。一度でも問題を見過ごしていたと判断されてしまえば、企業の信頼は大きく揺らぎます。今の時代、こうした問題への姿勢は特に重視されていますから、「気付かなかった」では済まされないでしょう。

 ほかにも、ビジネスを脅かす地政学リスクはたくさんあります。技術やノウハウを盗もうとする他国の産業スパイなども、企業が最大限注意を払うべきリスクです。日本には素晴らしい技術を持つ企業がたくさん存在するにもかかわらず、欧米企業に比べてこうしたリスクへの危機感が非常に弱いように感じます。

 自社に起こり得る地政学リスクを高度に予測・分析し、常に先手を打って対策に出ることで、ビジネスへのダメージを最小限に抑えるほか、ステークホルダーからの信頼も得ることができる。これが、「守りの地政学戦略」です。

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この記事の著者

名須川 楓太(Biz/Zine編集部)(ナスカワ フウタ)

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