UXリサーチの必要性とUXリサーチャーに必要な素養
「日本企業は世界でも高い技術力、そしてものづくりのノウハウを持っています。トヨタはその代表的な企業であり、その技術やものづくりの力を生かしてWoven Cityで実証実験を行い、人々のウェルビーイングを実現するために、大きな一歩を踏み出しました。では、技術と人々のウェルビーイングを繋ぎ合わせるときに必要なことは何でしょうか。それがUXリサーチです」
Sabrina Lee(サブリナ・リー:以下、リー)氏は、このようにWoven CityにおけるUXリサーチの重要性を語る。それは、リー氏のこれまでの経歴から導かれた答えである。
リー氏は心理学と工業デザインを学び、ヒューマン・ロボット・インタラクション、つまり人間とロボットとの相互作用を専門としている。心理学で学んだ「人間に関する理解」に基づいて、「テクノロジーと人間を結びつける仕事」がしたいと考え、これまでモバイルアプリやIoTデバイス、家電製品のマーケティングや消費者調査に携わってきた。その結果、リー氏はUXを考えないマーケティングは、何も意味を持たないことに気づいた。
そこでユーザーの代弁者になるべく、UXリサーチャーとしてのキャリアを開始し、Woven Cityを手がけるトヨタのグループ会社であるウーブン・プラネット・ホールディングスに入社。入社直後は、ドライバーと同乗者の車内体験や歩行者の交通安全に関する数々のユーザー調査などを経て、現在はWoven CityのUXリサーチに取り組んでいる。
人々のウェルビーイングを生み出すことを目的にさまざまな調査をしているという。プロジェクトチームの同僚には多種多様な経歴を持った人がいるが、共通するのは「人間の行動や生活について興味があり、情熱を持って考えている」ことだ。それがあれば、デザイナー、エンジニア、マーケター、アーティスト、医師、ビジネスオーナーなど、どんなバックグラウンドを持っていても、すべてはUXリサーチに生かされていく。ハウス氏も人間の行動に強い興味を持つのであれば、どんな経歴からでもUXに関われるし、関わるべきであると主張する。
特にWoven Cityは、「Human-Centered City(ヒト中心の街)」「Living Laboratory City(実証実験の街)」「Ever-Evolving City(未完成の街)」という3つのコンセプトがあり、これにはUXリサーチが大きく関わってくる。ヒト中心の街でUXリサーチを通じて人々のニーズや好みを発見し、リサーチに基づき実証実験を行い、常にテクノロジーによって商品やサービスなどを継続的に成長させていく未完成の街なのだ。