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『CHANGE 組織はなぜ変われないのか』ジョン・P・コッターが説く、脳科学とDX時代の企業変革とは

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階層組織とネットワーク組織によるデュアル・システム

 現代の企業経営に関わる方々は、常に変革のプレッシャーにさらされています。たとえば新規事業開発やDX、コーポレートガバナンス・コードへの対応、脱炭素社会への移行への対応など、さまざまな変革のプレッシャーがあります。

 今回紹介する書籍の共著者であるジョン・P・コッター名誉教授(以下、コッター氏)は、リーダーシップ論や経営変革論の第一人者ですが、新刊を読み解くためにも今までの氏の主張を取り上げたいと思います。

 それは、『ジョン・P・コッター 実行する組織』(ダイヤモンド社)において解説された「デュアル・システム」です。これは階層組織とネットワーク組織を併存させる組織構造ですが、階層組織には主に現在にフォーカスし効率性を重んじる活動を行わせ、ネットワーク組織には未来にフォーカスさせ、スピードを重視させることをミッションとします。これら役割の違う組織を併存させるという点が特徴です。また、ネットワーク組織に参加する社員は、階層組織の一員でもあり兼務を基本としています。

デュアル・システム
図版:デュアル・システム(ジョン・P・コッター『ジョン・P・コッター 実行する組織』[ダイヤモンド社]を参照し、編集部で作図)
※クリックすると拡大します

デュアル・システムを機能させる「5つの原則」と「8つのアクセラレータ」

 階層組織とネットワーク組織が併存する「デュアル・システム」は、理論上は理想的な組織構造ですが、実践が難しいと思う方も多いと思います。コッター氏は、『ジョン・P・コッター 実行する組織』で、デュアル・システムを機能させるために必要なこととして、「5つの原則」と「8つのアクセラレータ」を企業へのインタビューなどから導き出しています。

「5つの原則」

  • 原則1:社内のさまざまな部門からたくさんのチェンジ・エージェントを動員する
  • 原則2:「命じられてやる」ではなく「やりたい気持ち」を引き出す
  • 原則3:理性だけでなく感情にも訴える
  • 原則4:リーダーを増やす
  • 原則5:階層組織とネットワーク組織の連携を深める

 ネットワーク組織と聞くと、自由でかつ混乱を伴う規律のない組織を想像する方も多いと思います。コッター氏は、階層組織とネットワーク組織の違いは「行動のあり方」であり、どちらの組織にも規律が必要だとします。また、階層組織ではそのプロセスはよく知られいるものの、ネットワーク組織の規律のあるプロセスはあまり知られていないとし、ネットワーク組織の基本プロセスであり、加速を意味する「アクセラレータ」を8つ定義しました。

「8つのアクセラレータ」

  1. 危機感を生みだす
  2. 変革主導チームを築く
  3. 戦略ビジョンと変革施策を策定する
  4. ボランティアの数を増やす
  5. 障害を取り除き、行動を可能にする
  6. 短期的な成功を創造する
  7. 加速を維持する
  8. 変化を組織内に定着化させ
8つのアクセラレータ
図版:8つのアクセラレータ(ジョン・P・コッター『ジョン・P・コッター 実行する組織』[ダイヤモンド社]を参照し、編集部で作図)
※クリックすると拡大します

 またデュアル・システムの特徴の詳細に関しては、以下のように定義しています。

デュアル・システムの特徴
図版:デュアル・システムの特徴(ジョン・P・コッター『ジョン・P・コッター 実行する組織』[ダイヤモンド社]を参照し、編集部で作図)
※クリックすると拡大します

 階層組織とネットワーク組織では特徴や目的が異なりますが、階層組織での活動に慣れている大企業が、この「5つの原則」を知り、「8つのアクセラレータ」をうまく機能させることができれば、ネットワーク組織の構築に成功する確率は高まり、階層組織とネットワーク組織がうまく噛み合い出すとしています。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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