EYとOxford Analyticaは、ESGに関する最新レポート「サステナビリティ情報エコシステムの出現(The emerging sustainability information ecosystems)」を発表した。
同レポートによれば、環境・社会・ガバナンス(ESG)への投資および報告は、標準化された基準、規制、共通のパーパスが欠如する中で、存在意義を問われる問題に直面しており、インフレ進行とウクライナをめぐる情勢が問題をさらに難しくしているという。
また、ESGの信頼性と成功を揺るがす問題の1つとして、グリーンウォッシングの増加を指摘。ESGがすでに確立している財務報告エコシステムと遜色がないシステムであるとステークホルダーに認めてもらうには、サステナビリティエコシステムに携わる多くの関係者が責任を持ってこうした問題に対処し、ESGに対する信頼性を高めていかなければならないとしている。
加えて、ESGにどのような要素を含めるべきか、合意にもとづいて定められた評価指標をどのように運用すべきか、得られたデータをどのように有効活用すべきかという点について合意形成が未だになされていないことに言及。ESGへの信頼を高めるために取り組むべき、主な領域として次の5つを挙げている。
- ESG格付に関する透明性の向上
- サステナビリティ情報のさまざまな活用方法についての理解促進
- 保証可能な条件の整備
- 比較可能で、相互運用可能なタクソノミーの開発
- 新興諸国の市場参加者が直面している障壁への対処
「ESG推進をめぐる動きは目覚ましい勢いで拡大していますが、一方で土台となる重要な概念について整合や合意がなされていないことが妨げとなっています。最も懸念すべき点は、グリーンウォッシングを指摘する声が増えていることです。今まさにESGは岐路に立っていると言えます。ESGが直面しているこうしたさまざまな問題に対処していくためには全体的な観点からの体系的なアプローチが必要であり、サステナビリティは誰もが関わるべき課題です。業界のステークホルダーによるオープンな協力体制や信頼の構築に向けた努力を後押しする取り組みを拡大していく必要があります」(EY Global Vice Chair(サステナビリティ担当) Steve Varley氏)
同レポートでは、ESGへの格付け、マテリアリティ(重要課題)、サステナビリティ情報のさまざまな用途、保証に求められる条件について理解を深める必要性を指摘。また、ESGと財務報告の関連性が高まるにつれ、ESGエコシステムを形成する別の角度からの声や視点を提供する存在として、市民社会や従業員などに着目している。こうしたステークホルダーが関与を深めながら、報告および開示の基準やサステナブルファイナンス・タクソノミーの策定、および財務リスクと社会への影響を重視する投資家らに、有用なESG格付の開発をさらに進めていくことを求めている。